元暦元年のベースボール 〜和議・もう一つの物語〜

「3」大団円ルート背景



望美は考えている。

――みんなの協力で和議の場は用意された。
でも、問題はここからだ。

大団円ルートを経験した私だからこそ分かる!
和議の席は政子様vs清盛の戦いの場になってしまうと……。
でも「運命の迷宮」に行くためには致し方ないこと ←じゃなくて!!!

和議はきちんと結ばれなくちゃいけない。
二人の戦いを回避するにはどうしたらいい………?
そのためには………?

そうだ! 最初に両軍の兵に出番を作ればいいんだ!!

ついこの間まで剣を交えていた者同士のわだかまりを解き、
互いに相手を認めあって仲良くなれる機会を作ろう。

和議の流れを決定的にしてから二人が出てくるようにすればいいんだ。

それには、うん! これしかないよね!!

望美は決断し、そして実行した。

*********************************

「さあ、いよいよ始まりました。源平野球大会!
実況は、大会主催者の私、白龍の神子こと春日望美。
解説は将臣くんと譲くんでお送りします。
応援席の皆さ〜〜〜ん!
今日は張り切って応援しましょう!!」

「おおおおおおおおお!!!!!!!!!」
神泉苑特設グラウンドに鬨の声が上がる。

「将臣くん、譲くん、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼むぜ」
「よろしくお願いします、先輩☆↑☆↑☆↑」

「ところで現代人枠で二人に解説を頼んだけど、
二人とも野球の経験ってあったっけ?」

「おいおい、ぜひ頼むって言っといて今さらか?
俺の野球経験は、おやじと一緒にテレビ中継を見たくらいだぜ」

「忘れたのか、兄さん。
俺達、町内の少年野球や部活の助っ人を頼まれたことがあったじゃないか」
「ああ、そんなこともあったな。
物覚えがいい弟は心強いぜ」

「先輩☆↑☆↑☆↑、兄さんも俺も詳しいというほどではありませんが、
応援席の両軍どちらにも分かりやすいように解説しようと思います」
「おっ、いいこと言うじゃないか譲。
ってことで、俺の分もよろしく頼む」
「何だよそれ。せっかく先輩☆↑☆↑☆↑が俺達を頼ってくれたのに」

「ええと……さすが兄弟だけあって、
スリリングな掛け合いは球場の雰囲気にぴったりです!
期待大!ですね、皆さん!!??」

「おおおおおおおおお!!!!!!!!!」
グラウンドに再び鬨の声が上がる。

「それにしても野球勝負なんてうまいこと考えたもんだ。
和議ってやつは、成立させるのも続けるのも難しいからな。
正直、平家の中には暴れ足りないやつもいるが、
そんなやつにはいいガス抜きになる」

「ガス抜きが必要って、知mりとかとm盛とか知もrとか?」
「先輩☆↑☆↑☆↑、3連続でかむなんて、大丈夫ですか」

「ピンポイントで名指ししてるが、当たってるぜ。
でもあいつだけじゃなくて、兵もな……。
源氏が弱気になった今こそ好機とか言ってるやつもいる。
ところで、源氏の方はどうなんだ、譲?」
「正直言って、陰で不満を口にしているのは聞きました」

「うん、だから和議は形だけじゃだめ。
昨日の敵は今日の友って言うのは簡単だけど、
そうなるためには、やっぱりお互いに分かり合わないとね」

「そこに思い至るなんて、さすが先輩☆↑☆↑☆↑です。
スポーツは友情を育むにはぴったりですから」
「まあ、初めての野球に一緒に取り組むってとこがポイントかもな。
帰宅部のお前にしちゃ、眼の付け所がいいと俺も思うぜ」


「ということで、選手入場行進です!」

経正・敦盛兄弟の奏でる雅な楽の音に合わせ、
源氏と平家の兵たちが続々と入場してきた。
場内が歓声に包まれる。

「おいおい、両チームでいったい何人いるんだ?
代表メンバーだけじゃないのか?
ざっと見ても、甲子園の開会式くらいはいるぞ」

「出たい人には出てもらう。
これぞ全員野球です!」

「……意味がちょっと違うような気がします、先輩☆↑☆↑☆↑
でも、こういう形も有りかもしれませんね」
「全員まとめて面倒見るってか? お前らしいぜ」

「さあ、選手団はグラウンドを一周して整列しました。
将臣くん、譲くん、
行軍で慣れているだけあって、
みんな一糸まとわぬ見事な行進でしたね」

「……ぃっし!」←何かを想像している
「一糸乱れぬ……です、先輩☆↑☆↑☆↑」←何かを想像している

「さあみんな、試合では一致……」
「ありがちですが、
ハンケツとか言わないで下さい、先輩☆↑☆↑☆↑」←想像が暴走している
「半分なんてみみっちいことは言わないから大丈夫」
「おっと、全部もダメだ!!」←想像が暴走している

「一致……団結してがんばってね!!!」←さすが乙女ゲ・ネオロマのヒロイン

静まりかえっていた場内に、再び安堵の歓声が上がる。


「さあ、プレイボールです!
審判は白龍。球技にはなぜか親和性があるようです」

「任せて、神子。
私はこの審判ゾーンを動かずに、球の道筋を見極めるよ」

「さて、平家ピッチャーは惟盛!
ひらひらと腕を動かすプレイスタイルが売りです。
キャッチャーは、惟盛によく似た声の平家武士・別名モブさん」

「下賤の者が私の球に触れることなど許しません。
私の華麗な投球にさっさとひれ伏しなさい」

「小手先のごまかしなど熊野水軍には通用せんぞぉぉっ!!
愛用の櫂で木っ端微塵!!」
バッターの怒号がグラウンドに轟いた。

「対するバッターは熊野水軍副頭領。
持ち慣れたオールで、ブンブンとすごいスイングをしています」

「おいおい…バットじゃないのか……」
「球が打てるなら何でもいいんじゃない?」
「先輩☆↑☆↑☆↑がいいと言うなら……」

「技巧派とスラッガー! さあ、これは目が離せません!」

「惟盛は一球目から殺る気満々だな」
「バッターは力自慢ですから、全力で振ってくるでしょう」

「つまり副頭領は、空振りか三振かの意気込みってことですね!」

こけっ……
へちょ……

「あれ? 惟盛と副頭領が突然脱力した様子です。
こういう大事な場面でやる気のないプレー。
これはいけませんね、解説の有川さんs」

「おいおい…その二択じゃ……」
「一生打てません、先輩☆↑☆↑☆↑」

「あ、白龍が二人に審判として注意しています。
どうやら次の一球で決着をつけることになった模様です。
妥当なところでしょうか、有川さんs」

「おいおい、さっきから俺達ひとまとめになってるぜ」
「たとえ先輩☆↑☆↑☆↑でも、
兄さんと十把ひとからげは承服しかねます」

「十把ひと唐揚げかあ、懐かしいな、
お母さんの作ってくれたお弁当の唐揚げ……
ってもう! こんな時に唐揚げの話なんてしないで!」

「譲………」
「兄さん………」

「っって言ってる間に、副頭領がアウトになりました。
うーん、肝心なところをお伝えできなくて残念だなあ。
とにかく気を取り直して実況を続けます!
将臣くんも譲くんも、次はちゃんとお願いしますね。
解説者として、きっちり汚名……」

「言っておくが、汚名挽回じゃねえぞ」
「兄さん、先輩☆↑☆↑☆↑はそれくらい分かっている……
と……思います…………たぶん」

「もちろんそんなこと言わないよ!」
「そっか。悪かったな疑っちまって」
「すみませんでした、先輩☆↑☆↑☆↑」

「ふふっ、見直した?
じゃあ、別の言い方も披露しちゃうね。

名 誉 返 上!!!
ドヤッ!!!」

「ぐふっ」「ぐふっ」

「それはまさしく兄上のことね、望美」
バッターボックスから凛とした声が響いた。

「あ、朔……」

「ここに至るまでに兄上のしてしまったあんなことやこんなこと。
兄上は八葉として攻略キャラとして、
名誉を返上し続けてきたわ」

「え? 朔、別のルートを覚えているの……?」

「細かいことはもういいわ。
私はあなたの対ですもの。
全てまとめて、この一打にかけます」

「朔! かっこいい!」

「ん? 朔が手にしているのは何だ? いつもの扇より大きいが」
「ハリセン……みたいですね……」

「ハリセンで間違いないよ。
この前朔に作ってあげたんだ。
景時さんにつっこむ時に使ってねって」

「……景時ェ」←哀愁
「景時さん……」←哀愁

「惟盛殿、勝負です」
朔はハリセンを構えた。

「朔〜〜♪ お兄ちゃんがついてるからね〜〜!」
観客席からひときわよく通る声援が届く。

「ぐぬぬ……。
火属性の私に対して水属性をぶつけてくるとは……。
その罪、思い知らせてやりましょう!!」

「あれ、ピッチャーの様子が……」

「惟盛、何をする気だ」
「懐から別のボールを取り出したようです、先輩☆↑☆↑☆↑」

「行きなさい! 私の可愛い怨霊、鉄鼠!」

「ピッチャー、投げました!
あっ! ボールから怨霊が飛び出したよ!!」

「キシャァァァァッッ!!」

「しまった!
俺の手元には、マ●ドガスもウツボ●トもコイ●ングも無い」
「兄さん、初代の手持ちから更新されてない……」

朔、危機一髪!

その時、全てが同時に起きた。

「朔っ!!」
鉄鼠に向かって、景時の銃が金気の弾丸を放った。
「ピッカァァ!!」
可愛らしい黄色いネズミが10万ボルトを放った。
アナウンス席から飛び出した望美の手には、
すでに白龍の剣がある。

そして
パシィン!!と朔のハリセンも炸裂した。

「ああああ! 私の鉄鼠に何という非道いことを!!」

「まずい! 惟盛が……」
「激高して戦いの態勢に入っています。
このままでは先輩☆↑☆↑☆↑が危ない!」

平家の守備陣が一斉に惟盛の応援に駆けつけ、
負けじと源氏の兵もベンチを飛び出した。

神泉苑グラウンドは、あっという間に混乱のるつぼと化した。←陳腐表現便利

その様子を見てほくそ笑む二人がいる。

「おお、よくぞやった、惟盛。
それでこそ一門の花よ」

「まあ、怒りに我を忘れるなんて、
よくできた平家のお坊ちゃまだこと。
口惜しさを堪えてこの場に出た甲斐があったというものね」

「さて、戯れはこれで終いじゃ。
あの雌狐に目にもの見せてくれようぞ」

ずごごごごごごご ←効果音

「まあ素敵。清盛殿の気が膨れ上がっていくわ。
とうとう正体を現す気ね。
ああ、楽しみ。全部喰らってやりましょう」

ずごごごごごごご ←効果音

そして両巨頭は激突した。


――終わり――



毎度ばかばかしいお話で恐縮しきりな管理人です。

まあ、さんざんなお話でしたが、
紫背景に「完」の文字が出ないだけましかも……?

これなら荼吉尼天を追ってみんなで時空を飛ぶ結末が待っていますから、
「花の名残」経由「迷宮」行きルート決定ですね。

ということで、「運命の迷宮」移植待ってま〜す!!←声を大にしつつ……


[小説トップ]


2019.04.06筆