小ネタ集


 SS未満の小ネタばかりです。オチはあったりなかったり。 新しいものを上に書き加えていく形で更新していきます。 いつかSSに昇格できるものがあればいいなと願いつつ…。

[被告人・ポルトス]  [ポルトスの限界]  [ハロウィンの夜]
[先生にチョコを渡そう]  [再会]  [職員会議 議題:運動会について]
[残された謎]  [7月の創立祭]
[ポルトスの限界 ver.1]  [ボナシュー・ストーリー]
[秋の日の円舞曲]  [バレンタインデーの会話・ロシュフォールとリシュリュー]
[バレンタインデーの会話・ポルトス]  [でも瞬間最高視聴率はアラミスの入浴シーン]
[脇役だからさ]  [問題の多い求婚]
[問題の多い料理店]  [ワインとぶどう]
[逆転劇]  [幼稚園にて]
[重さについて]  [重さについて version up]
[ある男のぼやき]  [ワークシェア]
[Vs ポルトス 3on1]  [カボチャ伝説]
[★やーね]  [ゴング、鳴らず]
[悪魔男の涙×2]  [魔女っ娘への遠い道]
[ゴング、鳴る]  [Vs ポルトス]
[風に吹かれて]  [職員会議 議題:遠足について]
[教師は忙しいから]


被告人・ポルトス

リジチョ: これより、シュバリエ学園特別法廷を開廷する。
       まずは、ロシュフォールに冒頭弁論を行ってもらおう。
ロシュフ: その前にリシュリュー様、名前の表記が間違っているようです。
リジチョ: 早くも気づいたか、さすがは我が腹心よ。
       しかし、これは法廷における様式美である。
ロシュフ: 畏まりました。それでは冒頭弁論を始めさせて頂きます。

ポルトス: 異議あり! どうしてオレが被告人なんだよ。
ロシュフ: 貴様、自分の立場を理解していないのか。
       あの惨憺たる成績なら、落第して当然なのだ。
       弁明の機会を与えて下さったリシュリュー様の温情に感謝こそすれ、
       異議あり!などと、よく言えたものだ。
ポルトス: 補講だって一応受けたじゃねえか。途中で寝ちまったけど。
アラミス: ねえ、それは黙っておいた方がいいと思うよ。
ポルトス: んなこと言っても、オレにはヤマしい所なんか、ねえっつうの!

リジチョ: 被告人は静粛に! ここは秩序ある審理の場である。
ロシュフ: フン、居眠りしながらの補講など無意味。
       担当のロシナンテは、後で厳しく指導しておかねばな。
       とにかく、ポルトスは落第してもう一度、一年生の勉学をするべきだ。

リジチョ: ふむ。では次に、弁護側の主張を聞こう。
アトス : 俺は、生徒の立場からポルトスを弁護したい。
       ポルトスの剣術と乗馬の成績は抜群だ。
       さらに男子学生からの人望も厚く、時期銃士隊の候補でもある。
       今一度、機会を与えてもらいたい。

ボナシュ: ああ、弁護士席から、将来性抜群の富と権力の輝きが……。
プランシ: ちょっと、そんなに乗り出したら、隣のアラミス様が見えないでしょ。
       でも、どうして弁護士席には二人いるのかしら。
ロシナン: そそそそれも様式美だそうです〜。りりり理事長が仰っていました。
ミレディ: ロシナンテ先生、真っ青よ。
       ロシュフォール先生に威嚇されたんじゃ、無理もないわね。
トレヴィ: おや、もう結審したようですよ。

リジチョ: では、判決を申し渡す。

追        試

ポルトス: 結局いつもと同じじゃねえかぁぁぁぁぁぁっ!!

(2013/08/18)  ▲TOP


ポルトスの限界

やせいの ポルトスが つかまってしまった

「行けっ ダルタニアン!
やせいの ポルトスを たすけるんだ」

ダルタニアンは ロシェルのろうごくへ しのびこんだ

やせいの ポルトスは
ロシュフォールにぺしぺしされて
ひどい けがをしていた

はやく ジョ○イさんに あずけなければ

よわっている いまなら ボールに はいるはずだ

ポ〜ン
カパッ
もぞもぞもぞ
パカッ

やせいの ポルトスは ボールから でてしまった

ああっ、もうすこしだったのに!

やせいの ポルトスは おこっている

いちばん やすい ボールをなげるなんて
こうりゃくキャラに たいして しつれいだったかも しれない

ポルトスが げんきだったら
あくまタイプに へんしんして
こんなろうやくらい すぐに やぶれるのに

「しかたない
ダルタニアン、ろうやの てつごうしに たいあたりだ!」

ダルタニアンの たいあたり

てつごうしは びくともしない

ポルトスは はやく にげろ といいたそうに
ダルタニアンを みている

あ!? ダルタニアンの あたまのうえに「!」がでた
なにかを おもいついたようだ

ダルタニアンは てつごうしの あいだから
ポルトスに あつい きすを した

おや? ポルトスの ようすが……

………………うおおおおおおおおお!!

おめでとう! やせいの ポルトスは
あくまタイプに へんしんした

だが けがのせいで ふらふら している

ダルタニアンは やせいの ポルトスの
つのに さわった

うおおおおおおおおお!!

やせいの ポルトスは きもちよく なった

ダルタニアンは もっと つのに さわった

うおおおおおおおおお!!

やせいの ポルトスの ぜんしんに 
ちからが みなぎった

いいぞ ポルトス! このままてつごうしを やぶるんだ!

うおおおおおおおおお!!
うおおおおおおおおお!!
うおおおおおおおおお!!

う……………

ぱた…………

やせいの ポルトスは
かんじんの ところで ちからつきた

「ポルトス、だいじょうぶか?」

たたかう きりょくが ない

やせいの ポルトス きゅうしゅつさくせんは
しっぱいに おわった  ←だから、こいつ誰

(2013/01/05)  ▲TOP


ハロウィンの夜

ロシュフォール×ダルタニアン 後日談SS背景

「くしゅん……」
ダルタニアンは小さなくしゃみをして、窓を閉めた。 昼は暖かかったのに、夜はことのほか冷える。 しかし、閉じたばかりの窓の前からは、なかなか離れられない。 外の様子が気になって仕方がないのだ。

――この家にも来てくれるといいけど…。今、どの辺りにいるんだろう。 あ、声が聞こえた? 寒いけど、もう一度見てみよう。

しかし、再び窓を開けようとしたダルタニアンの手を、 後ろからロシュフォールが押さえた。
「止めておけ。風邪をひきたいのか」
「私、そんなにひ弱じゃありませんよ」
「今は大事な時だ。暖かくして身体を休めろ」
「うーーん、じゃあ、ちょっとだけ」
「貴様…手が冷え切っているではないか。絶対にだめだ」

その時、玄関ドアを勢いよくノックする音がした。
「来た!!」
「貴様、走るな!!」

ダルタニアンがドアを開けると、そこには小さなお化けや魔女の一団がいる。 お化け達は声をそろえて元気よく叫んだ。
「トリック・オア・トリート!」
しかし、ダルタニアンの後ろにロシュフォールが現れると、みな一斉にびしっと姿勢を正す。
「こんばんは! ロシュフォール先生!」

         *
         *
         *

「ふふっ、可愛いお化け達でしたね」
ソファでくつろぎながら、ダルタニアンはぶどうをほおばっている。
「私のクラスの生徒達のために張り切って菓子を作っていたのか」
ロシュフォールはそう言って、ワイングラスを傾けた。
「私、何だかほっとしました」
「菓子が無駄にならなかったからか」
「いいえ、あなたが一緒にお菓子を配ってくれたからですよ。ありがとう、あなた」
「フン、ハロウィンなど無用な行事だ。 だが、この学園に来た時に、シュバリエ学園の大事な伝統の一つと説明を受けた。 70年以上も前、全寮制の頃から行われていたそうだ。それなりに尊重しなければな」
「そんなに昔から? どんなだったのかな。きっと楽しかったんでしょうね」
「詳しい記録は残っていないらしい。だが…」
「……っくしゅっ!」
「大丈夫か、ダルタニアン!」
「平気です…あ……」
ダルタニアンはロシュフォールに抱え上げられた。
「今夜は早く寝ろ」
「その前に、お話の続きを聞かせて」
「何の話だ」
「昔のハロウィンの話です。だが…って言った所で止まってしまったでしょう」
「貴様のくしゃみで止まったのだが……」

二人は一緒に毛布にくるまった。ロシュフォールの腕の中は暖かい。
「好きなスタイルで仮装かぁ。面白そう。見てみたいなあ」
「フ…無理なことを。だが、確かに一見の価値はあったのだろうな」
「ねえ、その頃にあなたが学園にいたら、どんな格好をしたと思う?」
「くだらん」
「ふふっ、そう言うと思った」
「貴様……」


――今夜は遅くまで賑やかですね。子供達、楽しそう
――フン、性懲りもなくハロウィンを続けていくつもりのようだな
――楽しいことが続いていくって、ステキですね
――楽しい……か。だが貴様は、あの晩、楽しくなどなかったのではないか……
――ええ……。でも…先生とお話できましたから
――よく覚えているな
――忘れませんよ。あの時は辛かったけれど、先生との大切な思い出です
――私もだ
――今日は少し、寒いですね
――幹の天辺になどいるからだ。下りてこい。………暖めてやる。

(10/18)  ▲TOP


先生にチョコを渡そう

ロシュフォール×ダルタニアン

貴様、これは何だ。
チョコレート? 私はワインと一緒に甘いものを摂る習慣はない。
……酒のつまみではないと言うのか? 確かに、わざわざ酒のつまみにリボンをかけて包んだりはしないだろうな。
何……だと? バレンタインデー? くだらない。そのようなものは不要だ!
フン、そんなにがっかりすることはないだろう。どうしてもと言うなら、プランシェと友チョコとやらを送り合えばいい。
友チョコと本気は別? ……貴様…自分が何を言っているか分かっているのか。
ん………どうした、その手の包帯は? このチョコレートを作る時に火傷した……?
貴様、何を考えている、いや……何も考えていないから、こんなことになるのだな。 これでは剣が持てないではないか。
何? 次の剣術の授業までに治す…だと?  そうか、立派な心がけだな。では約束だ。必ず治してこい。
とりあえず、貴様の的外れな努力に免じて、このチョコレートは受け取っておく。 フン、礼など言うな。
それより、貴様の包帯の巻き方はなっていない。 それでは、治るものも治らないだろう。私と一緒に来い。手当てしてやる。
だからいいか、私のために、二度と火傷などするな。 ………分かったな、ダルタニアン―――。

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再 会

※ ロシュ×ダルED後背景

悪魔騒動から十数年が過ぎた。
学園が負った痛手も癒え、シュバリエ学園は伝統ある名門校として、 以前と変わることなく、多くの優秀な生徒の学舎となっている。

春――
今年も学園は新入生を迎え、その家族、来賓の臨席の下、 華やいだ中にも厳粛に入学式が行われた。
春の短い引き潮は間もなく終わる。 そのため、入学式が終了すると来賓は早々に出立し、 父兄は我が子と別れを惜しみつつ、次々と島を離れていった。

そんな中、人の流れに逆らって歩く女性がいる。
プランシェだ。学園の道を熟知した彼女の足取りに迷いはない。

やがてプランシェは、柔らかな青葉に包まれた一本の木の前で立ち止まった。

「ああ……ずいぶん大きくなったのね」

ほっそりとしたその木は、彼女より遙かに丈高かったが、 周囲の木々と比べると、まだ若木だ。 春に芽吹いた葉が、陽光を受けて地面に淡い影を落としている。

プランシェはまぶしそうに空を仰ぎ、木の幹にそっと手を触れた。
「久しぶり、ダルタニアン。 ねえ、アタシのこと、覚えてるよね」

そしていたずらっぽく、クスッと笑う。
「あ、美しくなりすぎて分からない?  あんたのことだから、あり得るかも。
……って、そんなこと、ないよね。 親友のこと、あんたが忘れるはずないもの」

そよ風が吹き、ちらちらと動く木漏れ日に、プランシェは目を瞬いた。

「あのね、私の娘がシュバリエ学園に入ったのよ。 だから私がここに来れたのは、入学式に列席したからなの」

だが、晴れがましい言葉を口にしながら、プランシェは視線を落とした。
「ごめんね…ダルタニアン。アタシ、学園にいた時は、 あなたとロシュフォール先生のことを考えると辛すぎて、 なかなかここに来ることができなかった……。 あなたがもういないなんて……どうしても受け入れることができなくて……」

その言葉に応えるように、風もないのに木漏れ日が揺れた。
プランシェははっとして目を見開き、木を凝視する。

「……! ダル…タニアン……?」

しかし細い枝も葉ももう動かず、周囲は静寂に満ちている。

「やだな、アタシったら。恥ずかしいとこ見せちゃった?
………でも……アタシ、信じることにするね。 あなたはロシュフォール先生と一緒に、ここにいるんだ…って」

プランシェは両手のこぶしを胸の前で握ると、にこっと笑った。
「だって、楽しいことを信じる方がいいもの。 ね、あなただってそう思うでしょう、ダルタニアン?」

その時、石畳を走る軽やかな足音が聞こえてきた。
「ママー! まだなのー!?」

「あら、待っていなさいって言ったのに、あの子ったら気が短いんだから」
プランシェは小さな声でつぶやくと、もう一度顔を上げて木の梢を仰いだ。

「ねえ、ダルタニアン、アタシは今、すっごく幸せだから。 アタシに似て、とっても可愛い娘と、優しくてステキなダーリンがいるんだもの。 彼とはね、卒業してから出会ったの。それでね………」

再び風もなく梢が揺れて、青い葉が一枚、はらりと葉末を離れた。 そして差し伸べたプランシェの掌に、静かに舞い降りる。

みずみずしい若葉の上に、涙の雫がぽろぽろと落ちた。

「……ば、ばか…。あんたってば、本当に空気読まないんだから……。 入学式は最高にうれしい日なのに…泣かせないでよ…」

「ママ、泣いてるの?」
「きゃっ!」
後ろから声をかけられて、プランシェは飛び上がった。

「あなたいつの間に」
「さっきから呼んでたじゃない。ねえ、どうしたの? 目が赤いよ。 それにママ、この木に話しかけてなかった? この木に…何かあるの?」

「もう、知りたがりさんなんだから。でも………そうね、 これからこの学園の生徒になるあなたには、本当のことを教えてあげる。あのね…」
「………もしかして、怖いお話?」
「全っ然、違うわよ。この木はね、恋人の木なの」

娘の様子が一変した。
「わあっ!! ステキ!!」

「永遠に結ばれた恋人たちに祝福された木なのよ」

「ほふぁ〜〜」
娘はうっとりと木を見上げる。

「さ、もう行きましょうか」
「は〜い。こんなにステキなこと知ってるなんて、さすがママね♪」

道の曲がり角で、最後にもう一度、プランシェは振り返った。

――ダルタニアン、ありがとう、教えてくれて。
あなたは幸せなんだ……って。
今も、これからも―――ずっとずっと、幸せなんだ……って。

手を繋いで去っていく母娘を、うららかな春の陽射しの中で 若木は静かに見送った。

(8/21)  ▲TOP


職員会議 議題:運動会について

@シュバリエ学園会議室
今日もまた、職員会議が開かれている。

議長を務めるリシュリューが、おもむろに言った。
「本日最後の議題は運動会の件である。だが、これは話し合うまでもないであろう」
「私もリシュリュー様に賛成です。 請願に必要な数の署名が集まったとはいえ、運動会など不要。却下すべきです」

「早まるな、ロシュフォール。話し合うまでもなく、運動会の開催は許可。 さらに、教員も参加すべきというのが私の結論である」
「は……? しかし……」

「『しかし』ですか? 珍しいですね、ロシュフォール先生が理事長に異議を唱えるなんて」
「黙れ、トレヴィル。私はリシュリュー様に反対しているのではない。 『しかし』頭数だけは揃っているのだから、アイデアを募ってもいいのではないか… と言おうとしたのだ。貴様のような者でも、シュバリエ学園の教師なら、建設的な意見 くらいは言えるだろう」
「ひ弱な芸術科教師に意見を求められてもねえ。 どんな競技でも、私はお手伝いに徹しますよ」
「そうか、では雑用担当はトレヴィルとする」
「え゛…」

「他に発言したい者はいるか」

「私、教師の参加には賛成ですわ。生徒から競技の要望は出ているのかしら?」
「請願書には、借り物競走とある」
(よよよよかった〜〜。騎馬戦とか棒倒しとかだったらどうしようかと思いました)
「騎馬戦とか棒倒しではないのですか」
(ひぃぃ…ややややっぱり…)

「ふむ、ロシュフォールは武闘派の競技がよいとの意見だな。 では震えているロシナンテ、発言を許す。意見を言うがいい」
「わわわ私は…かかか借り物競走に賛成です〜〜」
「フン」
(ひぃ〜〜)
「では、ロシナンテを借り物競走担当とする」
「ひぃぃ〜〜!!!」
「体育科主任のロシュフォールと協力して、競技を成功に導け」
「ひぃぃぃ〜〜〜〜!!!」

「では、これで会議を終了する。 ロシュフォール、トレヴィル、ロシナンテの3人は残ってよい。 競技の演出について、私も相談に乗ろう」

「光栄に存じます」
「嫌な予感がする………」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜」

(8/5)  ▲TOP


残された謎

「ねえ、コンスが悪魔だったって、まだ信じられないの。
でも、きっととてもカッコよかったんだろうなって思う。
悪魔がカッコいいなんて、おかしいかもしれないけど」

「やっぱり先輩にはバレちゃいましたか〜。
ぼくって、やる時はやりますから、悪魔になる時だってばっちりでしたよ。
にゃははははは」

「私のこと、守ってくれていたんだよね。
見たかったなあ…コンスが変身するところ」

「ぼくも男ですからね。(キリッ) 
悪魔の姿を見せて先輩を怖がらせちゃいけませんから。(キリッ)」

「でも私、コンスだったら絶対に怖がったりしなかったと思う。
ねえ、どんな姿だったの?」

「照れるなあ。
確かにカッコ悪くはなかったですよ。
でもこれ以上は、何だか自惚れてるみたいだし…」

「そんなことない。だって、コンスは本当にカッコいいもの。
照れなくていいよ」

「にゃはははは……まいったなあ。はははは……は…」
(言えない……悪魔になってもメガネをかけてたなんて、絶対…)

(8/5)  ▲TOP


7月の創立祭

@シュバリエ学園理事長室

コンコン…
「リシュリュー様、ロシュフォールです。 ご命令に従い、トレヴィルも連れて参りました」
「二人とも、入ってよい」

「!! リシュリュー様……これは…」
「すごい料理に極上のシャンパン。いったい何が始まるんです?」

「驚いたか。 この日のために用意した晩餐である。 さあ、早く席に着くがよい。 我が伝統あるシュバリエ学園の創立祭を共に祝おうではないか」
「創立…祭? 畏れながら、リシュリュー様…」
「創立祭は秋のはずですよ」

「二人とも、真実を見ておらぬのだな。困ったものよ。 今日は、シュバリエ学園が世に広く知らしめられた日。 つまり裏・創立祭であろう」

「そうでした…。さすがリシュリュー様、物事の本質を見ておられる」
「なるほどね。でも、裏・創立祭は語感が美しくないと思いますよ。 どこか後ろめたい感じがつきまとっていませんか」
「トレヴィル、リシュリュー様の芸術的な言語表現にケチをつけるとは何事だ。 しかも後ろめたい…など、後ろ暗い所のある者が言いそうなことだ」

「まあ待て、ロシュフォール。 せっかくの記念日だ。もっとよい言葉を探すのも悪くない。 そうであるな……真・創立祭というのはどうか」
「素晴らしいと存じます、リシュリュー様」
「他にも幾つか考えてみよう。本家創立祭…、いや、元祖創立祭の方が重々しいかもしれぬ」
「どちらにも格調の高さと気品を感じます」
「ふむ、アイデアがとめどなく溢れ出てくるぞ。こういうのはどうだ。 創立祭・another、創立祭/zero、創立祭・序……」

「ああ…ロシュフォール先生がおだてるから、止まらなくなっちゃったよ。 どれでもいいから適当に決めて、早くシャンパンを開けませんか」
「甲乙つけがたいからこそ、リシュリュー様は迷っておられる。 それを適当に決めろとは、無礼にもほどがあるぞ、トレヴィル」

「では、ゴージャスな語感を持つ、真元祖創立祭Z・永遠のファイナル――これに決定する」
「比類無きネーミングです、リシュリュー様」
「1年目から終わってない……?」

(7/7)  ▲TOP


ポルトスの限界 ver.1

「なあアトス、サバンナってどこにあるんだ。こっから遠いのか」
「ポルトス、いきなりどうした」
「アラミスが言ってたからさ。卒業後したら、オレはサバンナに行くといいって」

「アラミス、そんなことをポルトスに勧めたのか」
「僕は勧めたわけじゃないよ。卒業後にポルトスがサバンナに行くって、とても自然じゃない?  だからそう言っただけ」
「ふっ…」

「なっ何で二人だけわかったような顔してるんだよ。 そんなにオレにぴったりな所なら、もったいぶらずに教えてくれたっていいだろ」
「………ねえ、ポルトス、授業でやったこと、覚えていないの?」
「授業でやったか?」

「仕方ない。俺が説明しよう。まず最初に、サバンナというのは地名ではない」
「え? じゃあ、何なんだよ」
「そうだな…。場所と言うより、共通の特徴を持つ地帯と言う方が適切だ。 ここまではいいか?」
「おう。サバンナってのは、特徴ある地帯ってことだな」

――ポルトスは サバンナの知識を1つおぼえた

「うん、いい調子だよ、ポルトス」
「へっ、これくらいで感心すんなよ、アラミス。じゃ、次だ、アトス」

「サバンナ地帯があるのは、熱帯だ。これもいいか?」
「楽勝だぜ」

――ポルトスは サバンナの知識をもう1つおぼえた

「ふうん、今日のポルトスはなかなかやるね」
「今日の…は余計だろ、アラミス。さあ、どんどん行くぜ! その特徴ってやつをさっさと説明してくれ、アトス」

「熱帯と言うとジャングルを連想するかもしれないが、サバンナは草原地帯だ」

――ポルトスは サバンナの知識をさらに1つおぼえた

「大丈夫? ポルトス」
「……ったり前だ。……ライオンが狩をしてるような所ってことだろ」

「では、熱帯とはどういう所かわかるか?」
「暑い所だ」
「その認識は改めておけ。かみ砕いて言えば、低緯度の温暖な地帯が相当する」

――ポルトスは サバンナの知識をさらにもう1つおぼえた

「サバンナ地帯には、雨期と乾期がある」
「……………」

――ポルトスは サバンナの知識をあと1つ…おぼえられない

「同じ気候的な特徴を持つ場所は、 赤道を挟む世界各地にあり、アフリカばかりでなく、南アメリカや……ん?」
「…………………」
「ポルトス、どうしたの?」

――ポルトスは サバンナの知識を もっとおぼえたい
でもポルトスは 知識を4つ おぼえるのが せいいっぱいだ

「うう……」

――サバンナ気候の特徴と地理的分布のかわりに どの知識を わすれさせますか

「ちまちましたことなんてやってられっか。 全部だ、全部!!」

――1、2のぽかーん……
ポルトスは サバンナのことについて きれいさっぱり わすれた

「ああ、講義はここまででいいぜ。ありがとな、アトス」

バタン……

ポルトスは生徒会室を去っていった。

「あれではサバンナまでたどり着けそうもないな」
「本能で何とかなるんじゃない?」

(6/19)  ▲TOP


ボナシュー・ストーリー

※ アトス×ダルタニアン 背景
  アトス卒業後の学園が舞台です


あ、ダルタニアンちゃんだ。 今日も権力の光で輝いてるな。
早速ゴマす……あれ、脇目もふらずに行っちゃった。

行き先は生徒会室だろうな。 ダルタニアンちゃん、隊長の仕事に熱心だから。 ま、これっていいことだよね。 権力がより強固になるし。

編入した時からゴマをすっておかなかったのが悔やまれるけど、 あの頃のダルタニアンちゃんには、権力の気配なんて 欠片もなかったからなあ。

それが今では、伝統あるシュバリエ学園銃士隊の隊長。 し・か・も♪  先代隊長にして大物のご令息のアトスと結婚するのも、ほぼ間違いない。

う〜〜〜〜ん、たまらなくかぐわしい権力の香りと、 思わず目を閉じちゃうくらいにまぶしい、権力の後光。

2年生の時は、ボクとしたことが不覚だったなあ。 でも、過去は変えられなくても、未来は変えられるんだし、 後ろ向きにゴマをすっても仕方ないし。

さあ、生徒会室へ、ゴマすりGO!!


………と勇んで来たら、あ〜〜またうざいのがいる。

「ボナシュー先輩、またこんな所をうろうろしてるんですか」
「なんだ、コンスンタンティンか。 銃士隊が生徒会室を『こんな所』呼ばわりはないんじゃない?  生徒会は権力の中枢なのに」

「銃士隊に用があるなら、ぼくが聞いておきますけど」
「止めておくよ(即答)。 銃士隊N0.2(ポルトスはカウント外)と言っても、きみには権力の光が皆無だからね」

「ふぅ……用がないなら帰ってくれませんか。 それと、先輩にすり寄ろうとしてもムダですから」
「ずいぶん高飛車だね。まだ2年生のくせに。 そこをどいてよ。ボクはダルタニアンちゃんと話したいんだ」

「言っておきますけど、先輩はぼくが守りますからね」
「小者らしい勘違いだね。 ボクはキミには想像もできないような高尚な目的があるの、わかる?  あ、やっぱりわからないよね」
「先輩をつまらないゴマすりの犠牲になんかするもんか!」

「ちょっと、そこの二人」

「あ、プランシェちゃん」
「プランシェ先輩」

「もうっ、ドアの前を塞がないでよね。 図書委員長のプランシェちゃんが通るんだから」

コンコン…
「ダルタニアン、いるよね」
「あ、プランシェ」
「購入図書の相談なんだけど、ちょっと図書室に来てくれない? ナイトメアの新シリーズ、どれにしようかなって」
「わあ!♪ 行く行く!!」

バタン!

「あ、せんぱ〜い♪ 聞いて下さ〜い。ボナシュー先…」
「ああ、ダルタニアンちゃん、ご機嫌麗しゅ…」

「コンスンタンティン、ちょっと部屋を空けるからよろしく。 ボナシュー、用事はコンスンタンティンに伝えておいてくれる?  じゃ、行こう! プランシェ」
「うん! ばいば〜い、お二人さん」

「……………先輩……もちろん、この部屋はぼくが死守します!!」
「……………手強いな、ダルタニアンちゃん……」

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秋の日の円舞曲

ロシュフォール×ダルタニアン

※ もしも二人が生きていたなら…という捏造前提です
  二人は小さな田舎街で暮らしています


街を抜けて真っ直ぐに伸びる道は、ゆるやかな丘へと続いている。 その道を通って近隣の村々からやってきた人々が、 笑いさざめきながら街の広場につどっていた。

今日は収穫祭の日。今年は天候に恵まれたよい1年だった。 小さな街のささやかな祭りに集まった人々の顔は明るい。

「にぎやかですね。来てよかった〜。おいしいぶどうも食べられたし。 あ、あそこのお店にもある!」
「いいかげんにしろ。腹をこわす」
「そういう先生は新酒の飲み過ぎです」
「………私はほんの少し飲んだだけだ。貴様の異様な食欲と一緒にするな」
「今年のワインはおいしいですか?」
「新酒を美味いかどうか聞くのか? 貴様も少し酒のことを学んだ方がいい。だが… 今年はよいぶどうが採れたようだ」
「それは、お酒を飲まなくてもわかります。 みんなとても幸せそうにグラスを空けていますから」

一張羅を着込んだ男達も、若い娘らも、貫禄あるおかみさん達も、 誰の顔にも屈託のない笑顔がある。

――幸せ……か。私の幸せは、今隣に……
そこまで考えて、ふと自分も笑っているのではないかと思い、 ロシュフォールは自分の顔を引き締めた。

「今日はつきあってくれてありがとうございました」
「神妙だな」
「だって、先生って、こういう賑やかな場所はあまり好きじゃなさそうだし」
「いいかげん、その先生というのは止めろ」
「そうでした。つい……」
「反省したなら、私を正しく呼べ」
「はい」
「………返事だけか」
「はい?」
「……………もういい」

その時、広場の一画で、楽団が軽やかな音楽を奏で始めた。 あちらこちらで、男女が組になって踊り始める。

「あ…この曲は……」
ダルタニアンは足を止めた。 ロシュフォールもよく知っているワルツだ。
「……覚えていたのか」
「もちろんです。シュバリエ学園の舞踏会でも演奏されていましたから」

――踊ろう…って言ってくれないかなあ。 でも先生は、こんなに人が大勢いる所だと嫌がるだろうなあ。 だけど……踊りたいなあ。踊りたい踊りたい踊りたい!

――こいつまさか、私がダンスを申し込むなどと期待しているのではないだろうな。 ………いや、この気配は……明らかに期待している。 フン、私に無言の圧力をかけるとは、上等だ。 私が貴様の期待通りになるとでも………

並んで歩いていたロシュフォールは、前に出てダルタニアンに向き直った。
そして手をすっと差し出す。
「え…?」
「私の手を取れ、ダルタニアン」
「い…いいんですか」
「早くしろ。音楽が終わってしまう」
ぐいっと腕を引かれ、ダルタニアンの身体がくるりと回った。

長身のロシュフォールはただでさえ目立つ。 それが、優雅に踊り始めたのだから、人々の眼は二人に集中した。 周りで踊っていた人々も、ため息をつきながら二人のために場所を空ける。

「貴様、今日はよい動きだ。無駄な力が入っていない。 力を抜けと何度言っても聞かなかった頃とは雲泥の差だ」
「……あれは、牢屋で無理やりだったからです」
「無理やりではない」
「かなり強引でしたよ」
「いやだったなら、はっきり断ればいい。 強情な貴様にしては、中途半端な態度だ」
「……ええと、いやとか、そういうのじゃなくて、 あの時はまだ、先生のことが…」

ロシュフォールはダルタニアンを引き寄せた。
「私のことが…嫌い…だったか」
「わからなかったんです。 自分の気持ちも、せ……あなたのやさしさの理由も」

ロシュフォールは小さく微笑む。
「それでいい。合格だ、ダルタニアン」
「何に合格したんですか?」
「私の呼び方だ。完全に習得しろ。間違えることは許さない」
「そんな……。私、間違えたら叱られるんですか?」
「当然だ。罰も与える」
「ひどいです、先生」

ロシュフォールの笑みが引っ込んだ。
「貴様、わざとやっているのか。早速、罰だ」
二人の唇が重なる。

「う……んぐぐぐ。みんな…見ています」
「知ったことか」
「ん……ぐぐんぐんぐ…」

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バレンタインデーの会話・ロシュフォールとリシュリュー

「バレンタインデーなど不用!  私に群がって何の用かと思えば、チョコレートを受け取れだと?  節操なく異国の風習を取り入れ、教師にこのようなものを渡そうとするなど、 貴様らはそれでもシュバリエ学園の生徒か。 そもそもここは勉学の場だ。 菓子をやり取りしたいなら食堂で行え!」





いったいどうしたというのだ、 女子生徒は目の色を変えて一部の男子に集まり、 男子生徒はチョコレートをもらえたかどうかで一喜一憂している。 このような浮ついた状態は見過ごせない。 リシュリュー様にご報告しなければ。

コンコン

「リシュリュー様、失礼いたします」
「ちょうどよい所に来た、ロシュフォール。これを見よ」

!!!!!!!!!!!
「こ……これは………」

「見てわからぬか? 女子生徒(+ボナシュー)から贈られたチョコレートの山である」
「…………」
「ん? ロシュフォールはジャポンの習わしを知らないのか?」
「はい……いいえ…はい……」
「そうか、大量のチョコレートに驚いたか。 私の人気にショックを受けるのも無理はない。お前は一つももらえなかったようだな」
「いいえ……はい……。 しかし、リシュリュー様…これは聖バレンタインとはもはや無関係ではないでしょうか」
「うむ、その通りである。だが、はなから拒絶する必要もないであろう。 このような体験も無駄になることはあるまい」

!!!
さすがリシュリュー様。そこまで考えておいでになったのか。

「畏れ入りました。ところで、私は何をすればよろしいのでしょうか、リシュリュー様」
「これらを持ち帰り、食せ」
「は?」
「私からの友チョコだ。受け取れ、ロシュフォール」
「……………は……はい」
「遠慮は要らぬぞ。そうだ、ロシナンテに分けることも許可する」
「あ……ありがとうございます、リシュリュー様」
「礼には及ばぬ。そういえば、私に何か用があったのではないか?」
「い…いいえ……。急ぎではございませんので…」
「ホワイトデーのお返しは気にしなくてよいぞ」
「……感謝いたします」

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バレンタインデーの会話・ポルトス

よう、ダルタニアン。

女子がきゃーきゃーうるさく騒いでると思ったら、 今日って聖バレンタインの日だったんだな。 ジャポンとかでは、女子が男子にチョコレート贈って告白するんだって?  何で他所の国の真似するんだろうな。訳わかんねえぜ。

え? バレンタインデーに興味があるのかって? んなもん、あるわけねえだろ!  別に………お前以外から……コクられたってうれしくないし。 

ななな何でもねえよ!

でもまあ、オレ、チョコは嫌いじゃないぜ。 お前がもし……

……って、おい、ちょっと待てって何だよ。 せっかくオレと話してるのに、 なんでプランシェが来たからってチョコ渡しに行くんだよ。





ああ、やっと戻ってきたか。
待たせて悪かった?  これくらいのことで謝るなよ。 気にしてねえから。

へえ、プランシェからも何か受け取ってたと思ったら、 友チョコってやつの交換だったのか。 女って仲間内で盛り上がるのが好きだな。
え? さっきの話の続き?  ええと、何の話かって言うとだ…… お前が………わざわざオレのために

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン

わ! 何でさっさと教室に入るんだよ!?  オレより授業か?  オレに渡すもの………何もないのか?  お前がオレのためにチョコを用意したっていうんなら、もらってやってもいいんだぜ。
……………っていうか……………………お前のチョコほしい
……………くれ……………

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でも瞬間最高視聴率はアラミスの入浴シーン

リシュリュー様漫遊記

「ここにおわすをどなたと心得る!  畏れ多くも300年前の枢機卿、リシュリュー様にあらせられるぞ!!」
「ええいずがたかいひかえおろう」

「ロシュフォール、さすが我が腹心よ。よくぞ噛まずに言ったものだ」
「これもリシュリュー様のためにございます」
「熱演だね、ロシュフォール」
「そう言う貴様は、やる気があるのか。何だ、あの棒読みは」
「それより見てごらん。悪代官たちは頭を下げていないよ」

………………………………
しーーーーーーーん………
………………………………

「フン、気にくわないが、リシュリュー様のご威光に打たれて、 動くこともままならないということだろう」
「仕方あるまい。私のアップが瞬間視聴率を取ることになるかもしれぬな」
「みんなどん引きしてるだけだと思うけど」

「次はお約束の立ち回りシーンである。 サン・スケにサン・カク、懲らしめてやるがよい」
「畏まりました」
「名前、思い切り間違ってるよ……」

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脇役だからさ

「フフフ(なあ、もうすぐ仕事納めってホントか?)」
「フフフ(何言ってるんだ。おれたち下っ端にそんなものあるわけないだろう)」
「フフフ(あ〜あ…。おれたち、けっこうマジメに働いてるつもりだけどなあ)」
「フフフ(……ずいぶん仲間も減ったな)」
「フフフ(ひどいやられ方したやつもいたよな)」
「フフフ(そうだな…)」
「フフフ(さびしいな」)
「フフフ(冬の風が身にしみるな)」
「フフフ(おれたち、服も支給されてないからな」)
「フフフ(セリフだってフフフとしか聞こえてないんだろ?)」
「フフフ(表記もフフフとしか書かれていないらしいぞ)」
「フフフ(そんなのひどいよひどいよっ)」
「フフフ(悪魔には人権ないのか)」
「フフフ(………ないよ)」

「フフフ(おーい、急いで海岸に集合だ。海を渡る生徒たちを襲えってさ)」
「フフフ(はーい)」
「フフフ(はーい)」
「フフフ(はーい)」
「フフフ(はーい)」

「フフフ(………この中で、何人無事で戻ってこられるかな)」
「フフフ(そんなこと考えちゃだめだ)」
「フフフ(悲しいけど、おれたち、モブなのよね)」
「フフフ(仕事納めを信じて、がんばるしかないか)」
「フフフ(生き延びることができるといいな)」
「フフフ(そうだな)」
「フフフ(よし! 悪魔、行きまーす!)
パタパタパタ………

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問題の多い求婚

ロシュフォールがプロポーズをするとしたら、どんな感じになるのでしょう…?

◆ 遠回り

「貴様にこの指輪をやる」
「え? でもこれって、大事なものなんじゃ…。 いいんですか」
「大事なものだから貴様に渡すのだ。受け取れ」

「ありがとうございます。大切にしますね。 そうだ…傷をつけないように何かで包んでおかないと…」
がさごそ…

「貴様、指輪をなぜしまう」
「なくすといけませんから」
「男から指輪を受け取っておいて、その扱いか。こちらに寄越せ」
「はい…」
「手を出せ」
「はい」
「両手じゃない。左手だけでいい」
ぐいっ
「指輪とは……こうするものだ」

「あ……薬指に……」
「指輪の返却は認めない。覚悟を決めろ」
「並外れて遠回りなプロポーズですね」
「貴様が並外れて鈍いだけだ」

◆ 既成事実を作る

@ロシュフォールの家
「じゃあ私、これで。おいしいぶどう、ごちそうさまでした」
「どこへ行く」
「どこって……帰るんです」
「帰る必要はない。ここにいろ」

「ええと……お泊まりしていけってことですか」
「お泊まり…だと? 貴様は軽々しく男の家に外泊するのか」
「………じゃあ、どうすればいいんですか」
「ここに住め。ここが貴様の帰る場所だ」

「………え…………それってつまり…………ええと…」
「………貴様、まだわからないのか。ここで私と一緒に暮らせと言っている」
「並外れて遠回りな………以下略

◆ 直球

「ダルタニアン、貴様に結婚を申し込む。返答は少し待ってやる。 受けるか拒否するか、貴様が選べ」

「………これって、プロポーズ……ですよね」
「貴様の耳は飾りか。私ははっきり言ったはずだ」

「結婚っていうより決闘の申し込みみたいなので……。 プロポーズって、もっとロマンチックな感じだと思っていたんですけど」
「何を期待している。私が貴様の前にひざまずいて、花でも差し出すと思ったのか」
「思いません」←即答

「…………フン。では今度は花くらい用意してやる」
「今度……?」
「!………………」

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問題の多い料理店

@大人の男性のための高級誌「男の美食と美学」編集部。

「ロシナンテです。お呼びですか、ミレディ編集長」
「ええ、本誌の次の特集が決まったのよ。取材に行ってきて」
「はい! どこに行けばいいでしょうか」
「『レストラン・シュバリエ』よ。評判はあなたも耳にしているでしょう?」
「は、はい。いろいろと話題になっているレストランですね。 とても個性的なオーナーとか、厳しいと評判のソムリエとか…」
「わかっていないわね、ロシナンテ。 取材に先入観は禁物よ」
「すすすすみません〜〜」
「料理の味や接客に関しては、いつもの通り当社の専門スタッフが覆面取材をするわ。 あなたは、レストランの関係者にインタビューして、 全体的な雰囲気をよく観察するのよ。 あと、バー部門も忘れずに。最近、ものすごい人気なの。その秘密を探ってくるのよ」
「は…はい〜〜……」
「じゃ、資料を渡しておくわ。よく読んでおいてね。 アポはもう取ったから、約束の時間に遅れないように行きなさい」
「はい! ががががんばります〜〜」

ロシナンテはミレディに渡されたペーパーに目を通した。 そこには、インタビューを許可されたスタッフの名前が記されている。

オーナー: リシュリュー
レストラン部門
統括マネージャー、インテリアデザイン担当: トレヴィル
チーフ・ソムリエ: ロシュフォール

バー部門
新進気鋭のバーテンダー: アトス、アラミス、ポルトス

なぜでしょう……。 何だかとても怖いです〜〜。

困難な取材になりそうな予感に、ロシナンテはぶるぶると震えた。

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ワインとぶどう(1000打リク)

シュバリエ学園の食品保管庫。
係の者が、ワインセラーの前を通りすぎたロシュフォールに声をかけた。
「こんにちは、ロシュフォール先生。
ワインセラーにご用なのでは?」
「いや、今日はぶどうをもらいに来た。用意しろ」
「………え? ……ぶぶぶ」
「ないのか」
「い、いいえ。少しびっくりしまして」
「貴様の気持ちは聞いていない。あるなら早く出せ。
ただし味のよいものに限る」
「すっすみません…。ええと、ぶどうはこちらです」
「いろいろな種類があるな」
「味はどれも保障付きですよ」
「では、それとあれとこれと……あ、それもだ」
「ロシュフォール先生がぶどう好きとは存じませんでした」
「………ぶどうはワインの原料だからだ」
「は?」
「貴様、ワインが何から作られているかも知らないのか」
「いいえ、そういうわけでは…」
「フン、よけいな詮索などせず、さっさと袋に入れろ」
「はい……」

外に出ると、腕に抱えた袋から甘酸っぱい香りが漂ってくる。
(少し多かったか…?
………だが、これだけ揃えれば、どれかは口に合うだろう……。
この前は、ずいぶん嬉しそうな顔で食べていた……。
……………いや、私は気を遣っているのではない。
強情で考え無しの小娘一人に、気を遣ってやる必要もない。
全ては……リシュリュー様のため。)

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逆転劇(1000打リク)

もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜
もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜

「おい、ダルタニアン。いるか」
「きゃぁっ…熱っ…!」
「ん? 声が聞こえる。いるんだな。 入るぞ、ダルタニアン」
もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜もやもや〜
「きゃああっ、何なの、これ! 熱っ……!!」
「どうした!? うあ……すごい湯気だ」
「壊れたの…! シャワーが壊れたの! 熱っ…」
「危ねえ! すぐシャワーから離れろ!」
「でもお湯を止めないと! …きゃっ! 熱い!!!」
「いいから離れてろ! オレがやる!
このレバーを下げれば…! ……くっ! ……熱っ!」
「きゃああっ、ポルトス! 大丈夫!?」
「へっ、これくらい平気だっての。ほら、水になったぜ」
「でっ、でも、部屋に水が入ってくる! 私、誰か呼んでくるね!」
「待てよ! その格好で行くのかよ」
「あ……きゃああああっ! 見ないでえええっ!」
「落ち着け、見てねえよ。キリッ!
ほら、オレは後ろ向いてるだろ? キリッ!
ほいっ、バスタオル投げるぜ。キリッ!
「あ…ありがとう…」
「早くしねえと下の階に水が漏れちまう。
オレが行ってくるから、その間に身体拭いて着替えとけ」
「ポルトスって……頼りになるんだね」
「今頃わかったのかよ。キリッ!
もやもや〜もやもや〜もやもや〜 もやもや〜もやもや〜もやもや〜
へへへへ………へへへへへ………
もやもや〜もやもや〜もやもや〜 もやもや〜もやもや〜もやもや〜
へへへへ………へへへへへ………
もやもや〜もやも…………………
……………!!
夢か………

あ〜、なんでこんな夢見るんだよ。

仕方…ねえか……
昨日はあいつに一方的に助けられちまったからな。
でもやっぱ、この夢みたいに、オレが助ける側じゃねえと……
!!!
うっ…………………しまった!!

オレ、夢の中でもちゃんと見てねえ!!

……………寝直そう。

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幼稚園にて

情景1 職員室に3人の園児が呼ばれた

Q:なぜ順番を守って並ばないの?
A:わたしはつねにせんとうにたつおとこだ。

Q:どうしてポルトス君をたたいたの?
A:りしゅりゅーさまにいわれたからだ。
Q:ロシナンテ君も踏むようにって言われた?
A:きびしくしどうしただけだ。

Q:お友達が悪いことをしていたら止めてあげないとね。
A:だまってみているほうがおもしろいのに?

情景2 園庭で3人の園児が話している

「きょうしぐみにはもんだいじがおおいな」
「せんせいがたもてをやいているね。ぽるとす、たたかれたところはいたむ?」
「けっ、こんなきずたいしたことないさ」
「とにかくこのままではいけない。おれたちせいとぐみが ようちえんのへいわをまもろう」
「さんせい。ぼくはかだんのきれいなはなのへいわもまもるよ」
「おう、いっしょにがんばろうぜ」
「おれはちかう! ひとりはみんなのために!」
「みんなはひとりのために!」

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重さについて

ロシュフォールが大きな袋を持って出てきた。
庭で掃除をしていたロシナンテは「ひっ」と叫んで飛び上がる。

「おおおお出かけですか〜」
「海に行く」
「そそそそうですか」
「言うことはそれだけか」
「ははははい〜、直ちに瓶を片付けに行きます」
「早く来るな。邪魔になる」
「ももももちろんです〜。どうぞごゆっくり」
「散らかしたままにしておく気か。遅くなるな」
「よよよよくわかりませんが、とにかく承知しました〜〜」

門を出て行くロシュフォールの背中を見送りながら、ロシナンテはため息を吐いた。
はぁ〜〜〜。
ロシュフォール先生はたくさん飲むから、瓶を集めて持ち帰るのは大変です〜〜。

ロシナンテのため息は、ロシュフォールの耳に届いている。
ロシナンテは、いつも片付けて帰るのが大変だとほざいているが、 空の瓶で音を上げるとはあきれたものだ。私が持って行く瓶の方が重いことにも気づかないのか。
フ…鍛え方が足りないようだ。次は本数を増やしてやろう。

(11/22)  ▲TOP


重さについて version up

ザッザザッズルズルズルズル……

「どどどどうしたんですか〜ロシュフォール先生。 後ろに引きずっているのは、全滅したパーティーの皆様ですか〜?」
「貴様の目は節穴か。これはド●クエの棺桶ではない。ワインの木箱だ」
「ひっ! でででではもしかして、これから海に……」
「フン、答えるまでもない」

ザッザザッズルズルズルズル……

「ああ〜、行っちゃいました〜〜〜。
あんなに大量の瓶……無理です〜〜〜」

(11/23)  ▲TOP


ある男のぼやき

このところ島が騒がしいと思っていたら、 転生してきた者がやたらと幅をきかせているではないか。

先輩たる私に一言の挨拶もないとは、生意気な新参者めが。
しかも転生した上に悪魔に変身する能力まであるとは、鼻持ちならない 装飾過多! 悪趣味!
洗練された私の美意識は、このようなくどさには、とても耐えられない。

そういえば、私がこの島に転生してから何年経つのだろうか。
記憶が曖昧だ。
人々の反応から察するに、今の私の外見は、風情がある…を通り越して、 不気味さ(もちろん上品な不気味さだ) さえ漂っているようだから、100年、あるいは 200年過ぎているかもしれない。

それにしても、なぜ私が塔なのだ。
ロシェルは、砦から牢獄になった。うむ、これならまだわかるぞ。 転生かどうかは別として。
だが、私は栄光あるイギリス王国の貴族、初代(←ここがポイントだ!) バッキンガム公だ! イギリスで一番美しい男だったんだぞ!
それが攻略対象でもなく……塔か!?
これが本当の公塔無稽、なんちって。

私のナイスなセンスは歳月を経てもさび付いてはいない。
それなのに勝手なことをしおって、あの悪魔め。
そもそも、生前の私と面識もないのに、何という無礼だ!

さらにあやつめは10何年か前、私の入り口に 呪い付きの鍵までかけてしまった。

誰も入って来られないから、 私の中は荒れ放題なんだぞ 汚いんだぞ 蜘蛛の巣が張って ねずみとか走り回っているんだぞぉぉぉ!!
あ〜〜〜〜気持ち悪い 誰か掃除してくれ 美しい私を隅々までピカピカに磨いてくれ!!

万能首飾りだけは、魔力のおかげで汚れも虫も動物も近づかず、 キラキラ輝いているが、私だってきれいになりたい。

誰か気がつけ〜〜。
私もいいかげん怒るよ。
せめて掃除を…
ねえ、頼むから……
早く鍵を開けてくれぇ〜〜〜!!!

(11/16)  ▲TOP


ワークシェア

※ 公式ブログのロシュフォール後日談背景です

「このぶどう、とてもおいしい♪」
「よさそうな房を選んだからな」
「ありがとう、あなた」
「フ……いくら美味しくても、食べ過ぎは禁物だぞ」
「んぐんぐ……はい、気をつけます」
「ぶどうもいいが、貴様が選んだこのワインも悪くない」
「ふふっ、よかった。……あら…また一瓶空けたんですか」
「ああ、悪くないと言っただろう」
「あなたったら、飲み過ぎです」
「まだ酔ってはいない」
「酔うまで飲むつもりなんですか?」
「………仕方ない。今夜はこれでやめておこう。 だが、早くまた貴様と一緒にワインを楽しめるようになりたいものだ」
「もう少し待っていて下さいね、パパ」
「わかっている。今は大事な時だ。貴様一人の身体ではないのだから」
ロシュフォールは、ダルタニアンのお腹にそっと触れた。

「じゃあ、そろそろ片づけますね」
ダルタニアンはゆっくりと立ち上がって、皿とグラスをトレイに乗せた。 そのトレイをロシュフォールが取り上げる。
「片づけは私がやっておく。先に寝ているといい」
「いいの? 明日はドッジボールの早朝特訓を指導するんでしょう?」
「片づけなどすぐにすむ。私が寝坊して遅刻などすると思うか?」
「そうね。じゃあ、悪いけどお言葉に甘えて……」
「悪くなどない。もっと甘えろ」
「もう……料理や洗濯も手伝ってもらっているのに、これ以上どうやって」
「こうやって…だ。……と言いたいが、もうしばらくお預けだな」
二人は短くキスを交わした。
「おやすみなさい、あなた」
「おやすみ、ダルタニアン」

寝室のドアをそっと締めると、ロシュフォールは 手際よくテーブルを片付け、食器を洗った。

……今日は皿洗い完了まで5分46秒か。 ダルタニアンに比べればまだ遅いが、確実に早くなっている。 真剣に取り組めば、着実に進歩するものだ。 ……あと残っているのはゴミ捨てか。

空になったワインの瓶を集めようとして、 ロシュフォールはふと、手を止めた。

これは……誰か別の者の仕事ではないのか…?  人の仕事を横取りしてしまったような気がする。 ワインの瓶を片づけるたびに、 このような気持ちに襲われるのはなぜだ。

少し考え、ロシュフォールは結論を下した。

いつも仕事が中途半端な学園の清掃担当のせいだ。 根拠はないが確信はある。 これから一層厳しく指導しなければ。

丁度その頃、職員宿舎では、清掃係の男がブルブルガタガタ震えていた。
「ななな何か悪い予感がします〜〜〜。 明日は出勤したくありません〜〜〜。 頼りになる生徒もいないし、どうしたらいいいんでしょうか〜〜」

(11/5)  ▲TOP


Vs ポルトス 3on1

悪魔騒動が決着し、学園が落ち着きを取り戻したある日の昼休み。
シュバリエ学園の古式ゆかしい伝統に則り、今まさに決闘が始まろうとしていた。 以前ポルトスに挑んであえなく敗北し、剣を取られた3年生3人が、 再度決闘を申し込んできたのだった。

「よく逃げずにやってきたな、ポルトス」
「その勇気だけはほめてやるよ」
「勇気じゃなくて単に無謀なだけだろうがな」

「規則で認められてるんだし、オレには逃げる理由なんかないぜ。 だが再チャレンジなんて、お前らも懲りねぇな」

「っせえ! 再チャレンジじゃねえ。これはリベンジだ。 俺らの剣は、きっちり返してもらうぜ」
「言っておくが、俺達はお前の剣なんかいらねえ。ちゃんと跪いて忠誠を誓え」
「そして早速、忠誠の証として食堂の新メニュー、ヤキソバパンアラジャポネーゼを買いに行ってもらう」

「おいおい、そんなことはオレに勝ってから言えよ。 とにかく、ちゃっちゃと始めようぜ。ロシナンテ、いつもの通り立ち会いを頼む」
「任せて下さい、ポルトス君。では、ゴイオ君、オロトゴ君、モッショ君、誰から行きますか?」

3人は互いに顔を見合わせてニヤリと笑った。
「誰から? そんな甘いことするかよ。みんなが最初だ! ラッサンブレ・サリュー」
「ええ〜っ! 決闘を3回じゃないんですか!? 3対1なんて許可するわけには」
「もう始まってんだ、雑魚教師はひっこんでな。行くぜ、ポルトス! アンガルド」
「いいいいいけません〜〜!」
「いいから下がってろ、ロシナンテ」
「俺達の剣、かわせるものならかわしてみな! アレ!」
「ででででも〜、これは規則違反です」
「おう、その通りだ。だから規則を破るとどうなるか、こいつらにキツく教えてやるぜ」

キン!キン!キンッ!
続けざまの攻撃を、ポルトスは鮮やかに弾き返す。

「ちっ…相変わらず重い剣だ」
「怯むんじゃねえ、これからが本番だ。遅れるなよ、オロトガ、モッショ!」
3人はポルトスの前に縦一列に並んだ。
「覚悟しろ、ポルトス。これが、俺達暗い三年生のジェット気流攻撃だ!」

「はあぁ!? お前らマジメにやれよ」
「受けてみろ! 最強の三位一体攻撃(自称)を!」

しかし1分後………
地面に伸びていたのは3人の方だった。

「くそぅ…俺達のジェット気流攻撃が」
「最強(自称)のはずだったのになあ」
「く…口惜しい……」

「剣よこせ」
「すみません」「学校の備品なんです」「ごめんなさい」
「じゃ、取り上げるわけにはいかねえな。 そんならオレに忠誠を誓え。で、今すぐロシナンテに、雑魚なんて言ったことを謝れ」

* * * * *

「ポルトス、また決闘したんだって?」
「ああ、リベンジの野郎共に軽〜く勝ってきた。 これでオレが次期隊長になるのは間違いないぜ」
「ねえ、ポルトス。その前に進級を間違いなくしておいた方がいいんじゃない? 明日、歴史のテストだよ」
「やべっ、忘れてた!!」

(10/29)  ▲TOP


カボチャ伝説

今年もハロウィンの日が来た。 夜の海岸に生徒達が集い、みんな大いに楽しんでいる。

「今年はカボチャをかぶっている生徒が多いね、ポルトス」
「そうか? でもそう言うお前も全身カボチャ色じゃねえか。去年は緑色だったのに、 なんで今年はこんな目立つ色にしたんだよ」
「何かあった時に、すぐに見つけて呼んでもらえるようにね」
「あっさり言うなよ。…それじゃすぐジャマが入るって 気づいてないのかよ」
「何か言った、ポルトス?」
「い、いや、何でもねぇ」
「でもポルトスも目立ってるよ。夜には全身白ってよく見えるから」
「オレたち、目立ちまくりのカップルってことか。それも悪くねえな。 いや、悪い。せっかく二人きりでごにょごにょごにょ…」
「ねえ、おでこの上にある△は何の印?」
「あ、ああ、これはジャポンのお化けの目印らしいぜ」
「へえ、そうなんだ。ポルトスのキモノ姿、サムライみたいでかっこいいな」
「そ、そうか? オレのこと見直したか?」
「見直さなくても、ポルトスはカッコいいよ」
「へへ…へへへへ……」
(悪魔じゃなくなっても、ポルトスの笑い方は変わらないんだな…)
「へへへ………おい! そんな冷静な目で見んな!」

「プランシェちゃん、なんで今年の仮装はカボチャだらけなのかな」
「細い目で意外とよく見てるのね、ボナシュー。あれってポルトスにあやかろうとしているのよ」
「へえ、物好きだね。よりによってポルトスに、なんてさ」
「ポルトスだから、なのよ。カボチャアタマの子は全員1、2年の男子生徒だって気づいてる?」
「……ああ、なるほどね。わかっちゃったよ。権力とは永遠に無縁な連中ってことだね」
「みんな銃士隊にあこがれてるけど、成績が残念なのよね」
「ふうん。それでカボチャアタマなんて形だけ真似してるのか。ますます 絶望的じゃない?」
「そうなのよ。ばっかみたい。あれって、 成績が悪いですって宣伝してるようなものなのに」
「権力から遠いヤツらは存在しないも同然さ。 本物の幽霊みたいなものだよね。そんなのがうろうろしてるなんて、 ハロウィンらしいと思わない、プランシェちゃん」
「あ、ダルタニアンがいる!」
「う〜ん、権力の香気が潮風と一緒に吹き寄せて来たよ。レッツご挨拶〜!」
「ちょっと、ポルトスと一緒なのよ。邪魔しちゃダメだってば、ボナシュー!」

「わっ、うっせえのが来る。こっち来い、ダルタニアン」
「ちょ…待って、ポルトス。どこに行くの?」
「ハロウィンの夜だぜ。そんなの決まってんだろ?」
「あ! あの洞窟…?」
「トリック・オア・トリート」
「ふふっ、お菓子はたくさんあるよ」
「今年は一緒に食うか」
「うん!」

「ああ〜〜権力が遠ざかる〜。ひどいよプランシェちゃん。ボクにタックルするなんて」
「ダルタニアンの恋路はジャマさせないんだからね!」

(10/25)  ▲TOP


★やーね

「おはよう、ダルタニアン。今日はいよいよシュバリエ島ツアーだね」
「おはよう、トレヴィル。楽しみだわ、ぷんぷん」
「集合時間に遅れないように早めに朝食を取ろう」
「そうしましょう。ぷんぷん」
「どうしたの、ダルタニアン。私のことを怒っているの?」
「違うの。テレビを見て、トレヴィル。本当にひどい人がいるのね」
 
キャスター 「ストーカーという輩は全く困ったものですね、識者Aさん」
識者A 「厳しく取り締まるべきです」
「私もそうするべきだと思う」
「あ、ああ…そうだね」

識者B 「被害者につきまとい、住所を変えても追いかけるような悪質な者もいます」
(それじゃ、生まれ変わっても彼女を見つけた私って…)
「しつこいのって最低!」
「え…」←ぐさっ!
「そうよね、トレヴィル? 」
「う、うん」

識者C 「逃げ切ったと思って、名前も変えて暮らしていた所に、 ある日突然現れるなんて、とても恐ろしいですわ」
「ああっ! そんなの、想像しただけでいやっ!」
ぐさっ→「……」←ぐさっ!
「どうしてそこまで執着するのかしら」
「あ、愛してるから…じゃないかな」
「一方的すぎませんか?」
      ぐさっ!
        ↓
ぐさっ→「そ……そうだね…」←ぐさっ!
        ↑
       ぐさっ!
「突然…と言ったら、貴方との出会いもそうだった…」
どきっ! 「そ…そそそそうだったね」
「不思議なんだけど、その時私は運命的な出会いだって思ったの」
「ああああありがとう、ダルタニアン!!」
「くすっ、お礼を言うなんて、おかしなトレヴィル」
(ふう…焦ったらロシナンテ先生になっちゃったよ)

「さあ、朝ご飯を食べましょうか」
    ↓ ↓
→「そ、そうしよう」←
    ↑ ↑
「大丈夫、トレヴィル? 矢が刺さったみたいな顔してるけど」

(10/21)  ▲TOP


ゴング、鳴らず

@コンスタンティンの実家  登場人物:コンスタンティンの両親
コンスタンティンから、今度の休暇はダルタニアン先輩の家に行く…とのデレデレな手紙が届いた。 ダルタニアンからの手紙も同封されていて、そこには親子共々コンスタンティンに助けられたことへの 感謝の気持ちが、簡潔な中にも真摯な言葉で綴られていた。

-----------------

「あなたっ! どうしましょう」
「落ち着け! でもどうしよう」
「と、とにかく、コンスはとうとう運命の人に出会ったということね、よかったわ」
「しかも、その女性の父親の命を救ったとは」
「かっこいいわ、コンス!」
「なんてドラマチックなんだ!」
「感謝の気持ちが愛情に変わるといいわね…」
「そして二人は固い絆で結ばれる…」
「でも心配だわ。コンスはちゃんとご挨拶できるかしら。 完全に妄想モードになっていたりして」
「いきなりお父上のことをお義父さん…と呼んだりして」
「さすがに叱られるわ」
「何とか踏みとどまってほしいものだが…」
「それに、コンスは思っていることが顔にも口にも出てしまうから」
「まさか、自分×先輩の妄想劇場など口走ってはいないだろうな…お義父さんの前で」
「そうね、さすがにお義父さんの前ではまずいわ。でもステキだわ。私に 可愛い娘ができるのね。一緒に料理なんかすると、 『お母様のレシピを教えて下さい』なんて言われたりして。そこに コンスが入ってきて、つまみ食いしようとして、 ダルタニアンさんが『ダメだってば、コンス。できてからのお楽しみよ』 って怒ると、コンスが『いいじゃないか、ちょっとくらい。 あんまりおいしそうな匂いがするから』とか言って、 『いけないコンスね、じゃあ、一口だけ。あ〜ん』なんて、 目の前で熱々なところを見せられて、私は『いいわね〜』って言いながら 一応見てみないふりをするの……うふふふふふ」
「気が早すぎるぞ、まだ二人は卒業もしていないんだ。まずプロポーズが先だろう。 だがお義父さんからも承諾してもらわないとな。最初が肝心だ。 『初めまして、お義父さん。ダルタニアンさんは絶対に幸福にします』 とか、びしっとキメるんだぞ、コンス!」

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悪魔男の涙×2

「ロシュフォール、これを見よ」
「リシュリュー様、これは……」
「驚いたか? ジャポンから取り寄せた、携帯型DVDプレーヤーだ。 なかなかよいものであろう?」
「……畏れながら、リシュリュー様、 これは時代設定とはムジュンしないでしょうか」
「ふむ、異議があると申し出る者がいるやもしれぬな。 だが、その辺は曖昧にしておけばよい。元々、領主とビキニが混在する時代。 気にしたら負けである」
「……畏まりました。ところで、わざわざこれを取り寄せたのは、 深いお考えがあってのことと存じますが」
「ふふ、よい所に気づいたなロシュフォール。さすが我が腹心よ。 私の目的は、映像の力でトレヴィルの力を弱めることにある」
「ではええと…つまり…私たちの立ち位置は、まだ本編中ということでしょうか」
「些細なことは気にしなくてよいと言ったばかりではないか、ロシュフォール」
「申し訳ありません、リシュリュー様。では、早速トレヴィルに」
「いや、早まってはいかん。まずはポルトスに見せよ」
「は…? なぜ、ポルトスに」
「最も単純なものを観察することによって、 より複雑なものの反応を類推するのだ。物事は計画的に進めねばな」

(さすが、リシュリュー様。先の先を考えておられる。)
ロシュフォールはポルトスの部屋に忍び入り、テーブルにプレーヤーを置いた。 待つほどもなく、ポルトスが戻ってくる。窓の外で待ちかまえていたロシュフォールは、 リモコンの再生ボタンを押した。
(ポチッとな。)

再生されたのは、「悪魔男」という、昔のジャパニメーションだった。

「な、何だよ、これ! 見たことねえものが、オレの部屋に…」
ポルトスはすぐにプレーヤーの存在に気づき、そろそろと近づいてきた。

ロシュフォールは窓からその様子を観察する。
(警戒している。当然か。銃士隊たるもの、それくらいの知恵がなければ。 ……ん? 今度は画面に見入っている。クライマックスの場面のようだ。 声が大きい。しかし、何が映っているのだろうか。 ここまでポルトスを引きつけるとは。)

「う…うううう……」
(む、呻いている。いや違う)
「うおおおおおお! なぜだよう!」
(泣いている…のか、あのポルトスが)
「なぜこいつは悪魔に変身するたびに服を破くくせに、 元に戻った時に全裸じゃねぇんだよおおおおお!!」
(……………………………)
「ウソだろ、巨大化してるんだぜ、なのになぜ服が元通りに」
(………戻ろう)


「ということでした。リシュリュー様」
「うむ、それほどに動揺するとはな。ならば、トレヴィルの反応も期待できるであろう。 行け、ロシュフォール」

しかし「悪魔男」を見たトレヴィルは特に何の反応も示さず、 そのまま灯りを消して眠ってしまった。

「リシュリュー様……残念ながらトレヴィルは…」
「うむ、そうであったか。だが、あやつの正体を考えれば仕方あるまい。 DVDは、別のジャパニメーションを見るために私が使うこととする」
「はい、リシュリュー様」
「たまにはお前にも貸してやらぬでもない。その時は遠慮無く申し出るがいいぞ、ロシュフォール」
「ありがとうございます」

しかしその頃―――
「フフフ…」
「フフフ…」
パタパタパタ……
パタパタパタ……
森の奥に、赤い目の悪魔たちが集まっている。 その中心にいるのは、膝を抱えたトレヴィルだ。
「ぐすん…ぐすん……」
「フフ…フ」
「フ…フフフ」
「ありがとう…慰めてくれて」
「フ…」
「フフ…フフ」
パタ…パタ…
パタ…パタパタ…
「え? どうして泣いてるのかって? だってさ、とても悲しい物語を見ちゃったんだよ。 悪魔がさ…人に恋をしてね………ぐすんぐすん……他人事とは思えなくてさ……ぐすん…」
「フフフ…」
「フフフ…」
パタパタパタ……
パタパタパタ……
「だから、眠れなくなっちゃって…でも、ここに来てよかったよ」
「フフ…フ」
「フ…フフフ」
「え? 朝まで私と一緒にいてくれるの? ありがとうね、みんな」
「フ…」
「フフ…フフ」
パタ…パタ…
パタ…パタパタ…

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魔女っ娘への遠い道

※ 「職員会議 議題:ハロウィンについて」(←タイトル長っ…)のその後です。

理事長命令でハロウィンの仮装をすることになったロシュフォールとトレヴィルは、 おだやかならぬ空気に包まれながら一緒に準備を始めた。
芸術科教師として、アドバイス役も任されたトレヴィルは 片頬に笑みさえ浮かべているが、ロシュフォールの方はかなり険悪な雰囲気を漂わせている。 無理もない。先ほどからトレヴィルには言われ放題なのだ。

「ロシュフォール先生、魔女っ娘はもう少し愛想よく振る舞った方がいいと思いますよ」
「フン、魔女が周囲に媚びてどうする」
「基本設定を忘れては困りますね。ロシュフォール先生は魔女ではなく、魔女っ娘なんですから。 理事長から頂いた資料写真を思い出して下さい。さ、ジャポンの少女達を見習って、笑顔笑顔」

「トレヴィル、貴様…私をからかうつもりか」
「いやだなあ、私は自分の仕事を忠実に果たしているだけですよ。 芸術科教師としてロシュフォール先生にアドバイスするように、理事長から言われたんですから」
「貴様、職権濫用という言葉を知っているか」
「ならばロシュフォール先生は職務怠慢でしょう。 全力で魔女っ娘に扮すると、ご自身で理事長に約束したのに」
「くっ…貴様になど言われなくても、リシュリュー様の命令を私が違えるはずがない」
「では、やって頂きましょうか。笑顔、ですよ」

「笑えばいいんだな」
にぃぃ… (口の端が引きつるようだ)
「口だけでは笑顔はできません。目が怖いですよ」
「こうか…」
ぎゅむ (こめかみも引きつる…)
「表情が固いなあ…」
「これでどうだ」
ぐにゃ (か…顔全体が…痙攣している)

「トレヴィルルルル、貴様もぉぉぉ仮装メンバーだ。なぜ自分の練習をしななななない」 痙攣しながら、ロシュフォールは食い下がった。しかしトレヴィルは軽く受け流す。
「ご存知の通り、私は黒猫役ですから。魔女っ娘の後をおとなしくついていきますよ」
「貴様の黒猫など必要ない」
「フフフ…遠慮はご無用。私はロシュフォール先生の引き立て役に徹しますから。 さて、笑顔の練習はこれくらいにして衣装を決めましょうか。 ええと……こんなのはいかがですか」

トレヴィルはリシュリューから預かったジャポンの写真集を示した。 件の写真の魔女っ娘は、カラフルな超ミニスカートとブーツ姿で、 少し変わったとんがり帽子をかぶっている。

「黒魔術師の弟子、という設定のようですが、どことなく懐かしくありませんか、 ロシュフォール先生」
「却下だ」

「では、こちらで行きましょう」
トレヴィルは、シンプルな黒いワンピースと、黒い大きなリボンをつけた女の子を指さした。 箒を持ち、肩には黒猫を乗せている。
「却k」
「それならこれは」
「却」
「どうですか」
「きゃ」
「ねえ、そろそろ」
「き」
「あきらめましょうよ」
「k」

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ゴング、鳴る

@アトスの実家   登場人物:アトスの両親
アメリカから帰国し、ダルタニアンの卒業式に出席したアトスが、 彼女を両親に紹介するため、明日、やって来るという。

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「明日ですわね。アトスが例の娘を連れてくるのは」
「あの堅物のアトスが、結婚するなどと言い出した時には驚いたな」
「ああっ! よりによって、どうしてあんな娘と。 私が、いくらでもいいお嬢さんを紹介しますのに」
「アトスには見る目がない、とでも言いたげだな」
「言いたげ…なのではありません。言い切っているのですわ」
「だがアトスは、お前が思うよりしっかりしていると思うぞ。 何しろ儂の息子だからな」

「確かに、アトスはとても優秀ですけれど、まだ世間知らずではありませんか。 そこを悪い女につけこまれてしまったのですわ。 大学の休暇の時も、家に寄らずに真っ直ぐシュバリエ学園に行ってしまうなんて」
「アトスは心底惚れ込んでいるみたいだな。 まだ会ってもいないのだし、悪い娘と決めつけるのは一方的にすぎるぞ」
「家柄だって悪いではありませんか」
「父親はシュバリエ学園の教師だったと聞いたが」
「学園長や理事長の娘ならいざ知らず、一介の教師では話になりませんわ。 しかも子供の頃から片田舎で暮らしていたというではありませんか。 そんな山猿同然の娘を…っっっ!」
「お前、まさかアトスにそのようなことを言ったのではないだろうな。 逆効果になるぞ」
「あら、手紙にも『山猿と結婚するのは許さない』と、はっきり書きましたわ。 意味の分からない返事が来ましたけど」
「あのアトスが混乱したのか…。何と書いてあったのだ」
「山猿などと、親友を貶めないで下さい。 そして俺が結婚する相手はポルトスではありません…と」
「うむ、わけがわからない」

「とにかく明日、アトスの前で化けの皮を剥がしてやりますわ」
「二人の話を聞く方が先だと思うが」
「あなたは甘いのです! アトスには、絶対にあきらめさせてみせますわ」
「自信満々だな」
「私ですから」
「アトスはあきらめないと思うぞ。儂の息子だからな」

(09/30)  ▲TOP


Vs ポルトス

やせいの ポルトスが あらわれた

「いけっ! きんぱつの女の子! メロメロこうげきだ!」

きんぱつの女の子は メロメロを つかった

やせいの ポルトスは へいきなかおをしている

「きんぱつの女の子 もどれ!
よしっ! おしゃれな女の子、きみにきめた!
今度こそ、メロメロだ!」

おしゃれな女の子の メロメロ こうげき

やせいの ポルトスは しらんぷりを している

「このままでは にげられてしまう。
そうだ、カボチャを なげてみよう」

ぽいっ

やせいの ポルトスは カボチャを かぶった
やせいの ポルトスは もう にげられない

「こうなったら、きみしかいない!
いけっ! ダルタニアン! メロメ…」

ダルタニアンは めいれいを むしして
ポルトスの カボチャを とってしまった

やせいの ポルトスの のしかかり

カボチャが ダルタニアンの かわりに こうげきを うけた
カボチャは きえてしまった

へへへ…へへへへ……
やせいの ポルトスは わらいだした

おや、やせいの ポルトスのようすが…

「うわっ、Bボタン!」

てきに Bボタンは つかえない

やせいの ポルトスは あくまタイプに へんしんした

「なんだ。しんかじゃなくて へんしんだったのか。
でも、あくまタイプは つよい。
ダルタニアン、もどれ!」

てきに うしろは みせられない!

「いや、バトルじゃないだろ、これ」

ダルタニアンは やせいのポルトスを じっとみている

やせいの ポルトスの すがたが もとにもどった
やせいの ポルトスは ぜんらに なった
やせいの ポルトスの ぼうぎょりょくが がくっとさがった
やせいの ポルトスは あわてている

ダルタニアンは やせいの ポルトスの ふくを ひろってあげた

やせいの ポルトスは なかまにしてほしそうに
ダルタニアンを みている
なかまにしてあげますか?

はい
いえす

「もちろん、いえすだ!」

どちらを えらんでも おなじだった

「ようし! ポルトス、ゲットだぜ!」 ←てか、こいつ誰

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風に吹かれて

(ロシュフォール×ダルタニアン)

「今日は風が気持ちいいですね」
「もう秋か。休暇が終わる頃だ」
「それにしても、この島には意外と木のご夫婦が多いんですね」
「夫婦かどうかはわからないが、ここから見えるだけでも透き通った人影が幾つもあるのは確かだ」
「いったいこの島の過去に何があったんでしょう」
「フン…いかにも悪魔が好みそうな曰く因縁があるということだ」
「とにかく経緯はどうでも、隣近所とは仲よくした方がいいですよね」
「ここから動けぬ身で仲よくもないだろう」
「でも、遠くからでもご挨拶くらいできますから」
「好きにしろ。だが……」
「あ…先生、何を」
「こっちに来い」
「???」
「これを見ろ」
「……あ! 花が…咲いてる」
「自分の木に咲いた花に、今頃気づいたのか」
「初めて咲いた花ですね。可愛い…」
「地味な風媒花だ」
「そんな風に言ったら身も蓋もないです。可愛い私たちの花なのに」
「とにかく気をつけることだ」
「何を気をつけるんですか?」
「貴様…そんなこともわからないのか。花粉だ」
「え?」
「他の木から飛んできた、どこのものともわからない花粉など、つけないようにしろ」
「………先生、ヤキモチですか」
「貴様……何を…」
「わかりました。私、気をつけます。でも、先生も同じですよ」
「何?」
「花粉を飛ばさないで下さい」
「無茶を言うな」
「……………」
「わかった。貴様のわがままにつき合ってやる」
「ふふっ、ありがとうございます、先生」

そして歳月が流れ………

花粉を飛ばさず花粉を寄せ付けず…を貫いた木は、短命であった。
木から解き放たれた二人は、再び人間へと生まれ変わり、再び出会って……

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職員会議   議題:遠足について

「ロシナンテ、貴様…そんなことを生徒に言ったのか」
「すすすすみません。そそそその通りです」
「生徒の機嫌を取ってどうする。バナナはおやつだ」
「そそそそんな〜〜」
「私、ロシナンテ先生に賛成しますわ。バナナはおやつに含みません」
「馬鹿なことを…」
「ででででも、バナナがおやつだったら、それだけでおやつ代の大半が 消えてしまいます」
「そうまでして持って行きたいのか」
「りりりり理事長〜〜」
「リシュリュー様、ご裁可を」

「うむ。双方の主張は分かった。だがロシュフォールもロシナンテも、 もう争うには及ばぬぞ。 この論争の原因は350ジャポン円以内という、おやつ代の設定にあるのだ。 よって、こうしよう。理事長権限で、おやつ代の上限を500ジャポン円まで引き上げる」

「畏まりました、リシュリュー様」
「あああありがとうございます、理事長」
「では、本日の会議はこれで終了とする」

「ロシナンテ、後で話がある」
「ひいいいいいいっ」

「ZZZZZZZZ〜〜」
「トレヴィル先生、会議は終わってますよ」
「ぅあ……」(←「お客さん、終点ですよ」と駅員に起こされたサラリーマン風に)

(09/26)  ▲TOP


教師は忙しいから

「貴様、カステルモールの娘か」
「え、ご存知なかったんですか? もしかしてロシュフォール先生は、 編入学生の申請書類に目を通していない…とか?  授業で自分が受け持つ生徒なのに…?」

(ロシナンテ……なぜ書類を持ってこなかった。 後で厳しく指導しておかなければ。)

(09/26)  ▲TOP




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