年賀状

[アトス][ポルトス] [ロシュフォール] [リシュリュー]


アトス

新年おめでとう、ダルタニアン。
今年が俺たちにとってよい1年となるよう、 俺はできる限りのことをしようと思っている。
いや、ただ思っているだけではない。
これは年頭に当たっての、俺の誓いだ。

そういえば、この前、
アメリカでもナイトメアシリーズが
翻訳出版されていることを知った。
大学の図書館に置いてあって、いつも数冊は貸し出しされている。
なかなか人気のようだ。

さすがに早口言葉大全集の英訳は出ていないが、
今度会った時に、俺なりに訳した英語版の早口言葉を聞かせてやろう。
英語は、もう読むのも話すのも全く不自由することはない。
俺だからな。

話が横道にそれてしまった。
この手紙が着く頃、俺もシュバリエ島に渡っているはずだ。
何とか都合がついたので、 満ち潮になるまでの数日間だが、
お前と過ごすことができる。
楽しみだ。

部屋で待っていろ。

                         アトスより



ポルトス

よっ! 今年もよろしくな!
…って、何でお前、年越しパーティーなんかやってんだよ。
まあ、お前は銃士隊の隊長だし、事情があって冬の休暇を
学園で過ごすことになった生徒の面倒をみるのも、
仕事の内ってことかもしれねえけどさ、
カウントダウンの後は女子会ってなんだよ。
オレはどうすんだよ。
お前と一緒にいたかったのに……
あ、もちろん二人きりでだぞ。

女ばっかりの所になんか行けねえから、
お前が部屋に戻るの待ってたら、
オレが声をかける前に、ベッドにもぐって即爆睡じゃねえか。

お前があんまり気持ちよさそうに寝てるから、
さすがに起こせなくてさ……
寝込みを襲うみたいで…
まあ、襲いたくなくもない気は……
あれ? これだと、どっちなんだ。
襲いたいのか襲いたくないのか?
あ”ーーっわからねえ!

わかんねえけど、この手紙、ドアの下から入れておくから、
読んだら、すぐオレの部屋に来いよ。

徹夜でお前のこと待ってたから、眠くてたまらねえ。
あ、でも、オレが眠ってても、
ちゃんと寝込みを襲うんだぞ!

いいか、絶対だからな!

                      ポルトス



ロシュフォール

新年の挨拶など不用だ。
まして、年賀状とかいう虚礼に意味はない。
何? 新年はめでたいから虚礼も必要なのだと?
めでたいのは、貴様の頭だ。

もちろん私は、リシュリュー様の元にはご挨拶に伺う。
これは虚礼の類ではない。
新たな年もまた、リシュリュー様のため、
この身を捧げることを誓う、神聖な儀式だ。

フン…だが貴様のことだ。
私が何かそれらしいことを口にするまで
頑として引かないつもりだろう。

貴様は遠慮と言うことを知らないのか。
もうリシュリュー様との約束の時間が迫っているというのに、
もしもお待たせすることになってしまったらどうするのだ。

仕方ない。言ってやる。
真心などこもっていなくてもいいというならな。
いいか、これは形だけのものだ。
それを承知の上で聞け。

………貴様の幸福を、祈っている。

                     ロシュフォール



リシュリュー

謹賀新年だ、ダルタニアン。
今年はドラゴンの年であるぞ。

何を言うのかと驚いたであろう?
つぶらな瞳を大きく開いた、
お前の愛らしい顔が目に浮かぶようだぞ。

実は、ドラゴンの年とは、ジャポンの習わしによる呼び方なのだ。
昨年はウサギの年だったというが、
その次がドラゴンとは、奇妙な取り合わせであるな。

ところで、私とお前を動物に例えたなら、何になるのだろうか。

……いや、これは我ながら愚問であった。
太陽神と月の女神…戯れに付けた名だが、
これが最も私たちにふさわしいものだ。

愛しき我がセレーネよ、
新年の逢瀬の場は、青い月光の降り注ぐあの教会にしよう。
今宵、必ず来るのだぞ。
忘れられぬ思い出の夜にしてやろう。
だから、私を待たせるようなことをしたら、
月に代わってお仕置きをするぞ。
                        アポロン





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