収録タイトル
職員会議
議題「遠足について」 / 卒業後の進路
議題「ハロウィンについて」 / 魔女っ娘への遠い道
議題「研修旅行について」 / 爆走するは我にあり
悪魔男の涙×2
ある男のぼやき
問題の多い求婚
バレンタインデーの会話
ロシュフォールとリシュリュー / ポルトス
逆転劇
偽書 ナイトメア
ロシュフォール / リシュリュー
Vs ポルトス
本文抜粋
「爆走するは我にあり」 より
そしてリシュリューのバイクは――
「私専用のものを、特注で作らせた。ホイール・オブ・フォーチュン号という。どうだ、私のネーミングセンスもなかなかであろう?」
「バイクも名前も、どちらもすばらしいものです。さすがはリシュリュー様。名馬に跨ったかつてのお姿を思い出します」
「うむ。ロシュフォールは見る目がある。最高の男は、常に最高の物を持たなければな。だが、お前がレンタルしたのは普通の750ccだが、それでもなかなか様になっているぞ」
「畏れ入ります。しかし、それに引きかえこの者は……」
ロシュフォールは、我慢ならないといった表情で、トレヴィルを見た。
「おや、私に何かご不満でも? ロシュフォール先生」
「不満? そんなに生やさしいものではない。貴様のおかげで、高速道路を使えないのだ」
「ははは、トレヴィルを責めるな。一般道を行くのも悪くはない。トレヴィルも、そのマシンでよくついてきておる。確か、ママン・チャリと言うのだったな」
「畏れながらリシュリュー様、前カゴ付自転車はマシンとは言えないのではないでしょうか」
「おや、ロシュフォール先生も、時にはいいことを言いますね。私、機械は性に合わないんですよ」
「ならば、素直に機械音痴と認めろ」
「私は音楽の教師ですよ。音痴では務まりません」
「フン、口の減らないヤツだ。だが、そろそろ出発の時間だ。異国で迷子にならないように、せいぜいがんばるんだな」
「はいはい……。ふうう、早く帰ってパトリックさんと一杯やりたいよ」
二台のバイクが爆音を轟かせ、トレヴィルはママン・チャリのペダルに足をかけた。
リシュリューが力強く叫ぶ。
「変☆身!」
ロシュフォールもそれに倣った。
「変・身」
「また周りの人が見てるよ。恥ずかしいなあ。ジャポンのバイク乗りの作法…とか理事長は言ってるけど、他に誰もやってないことくらい気がつけばいいのに」
「行くぞ!」
リシュリューの後ろに、ロシュフォールがつき、後方かなり遅れてトレヴィルがキコキコとペダルをこぐ。
こうして三人は、日本漫遊ツーリングの旅を続けていくのだった。
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