あじあん・びゅーてぃ



「神子、これは何かの間違いか?」
「ぎくっ!……な、何のことですか?」
「眼をそらすな」
「はい」

やっぱり、すぐバレちゃったか…。
あかねは思い切りよく泰明に向き直った。

いつもとは、少し違う泰明がそこにいる。

「神子…うれしそうだな」
「ええ」
「神子の喜ぶ顔を見ると、私もうれしい」
「泰明さんにそう言ってもらえると、私もうれしいです」
「そうか、神子がうれしいなら……」
「問題ない…ですね」
「…………いや、問題ある」

「でも、その髪型、似合ってますよ」
「やはり……これはわざとか」

泰明は、自分の髪を指に挟み、あかねに示した。
先ほど、あかねが結ってくれたのだが…。

「こういうのも、たまにはいいかなあって、思ったんですけど」
「私の髪は縄ではない」
「それは三つ編みって言います。
私の世界では、よくある結い方なんですよ」
「神子は、元の世界の髪型が恋しいのか…」

ぶんぶんぶんっ!!
「違いますっ!
泰明さんの髪って、つやつやさらさらストレートで、
キューティクルも痛んでなくて、こんなに長いのに枝毛なんかもなくて、
つまり、とってもステキな髪だから、
ちょっとアレンジしてみたくなって……」

「よく、分からない…。
すとれえとときゅうてぃくるとあれんじについて説明してほしい」
「う…うううう……
つまり、まとめて言うと、泰明さんの髪は、とてもきれいだっていうことです」
「まとめ過ぎだ、神子」
「ごめんなさい…」
「だが……」
「え?何?泰明さん……あ…」

泰明は、自分の膝の上にあかねを後ろ向きに座らせた。
つ、と腕を伸ばすと、櫛がふわふわと宙を飛んできて手の中に納まる。
泰明はその櫛であかねの髪を丁寧に梳き、
迷いのない手つきで髪を結い上げていく。

「神子、見てみるといい」
泰明はあかねの手を取って庭に下りた。

小さな池の水鏡に、二人並んで映る。
三つ編みのあかねと、いつの間にか髪を解いていた泰明。

「みつあみの神子は、とても愛らしい」
「三つ編みの泰明さんも、可愛かったすてきでしたよ…」
「……………」

あかねは顔を上げて、流れ落ちる泰明の髪に手を滑らせてみた。
解いたばかりというのに、結った痕はもうどこにもない。

「きれいな髪……」
「……………」
「泰明さん……」
「……………」
にこっ
ぽっ
「もう一度だけ…いいですか?」
「……………」
「……ごめんんさい…私…」
「いや、そこまで神子が言うなら……」
「! ♪♪♪〜〜!!」
「私の形の式神を貸す」
「●×▼◇★×◎■………」
「…………分かった。私の髪は、神子に任せよう」
「泰明さんっ!ありがとう!」

あかねにむぎゅっと抱きつかれ、泰明の頬が桜色に染まった。

その後のことは……
知らぬふりをする方が親切…というものだろう。






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あとがき

拍手から下ろしたまま、時間が経ってしまいましたが、
やっと加筆してアップの運びとなりました。

あかねちゃんにひたすら甘い泰明さんが好きです。
時間ができましたら、あとがきに、本文のオチを付け足す予定(笑)です。

2008.7.17 拍手より加筆移動