対決!龍神温泉 @1・前編

「1」オールキャラ

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「ああ〜いいお湯だね〜♪」
あかねはう〜んと伸びをした。

「そうね! まさかこの世界で温泉に入れるなんて」
蘭がうれしそうにうなずく。

「神子様、温泉というのは心地よいものですね。
お湯の中では、なぜこんなに身体がゆらゆらするのでしょう」
「そうか、藤姫は初めて温泉に入ったんだね」
「はい。湯帷子を着ないと、こんなに楽に動けるのですね。
本当に楽しいですわ。ありがとうございます、神子様」
藤姫はお湯をぱしゃぱしゃして喜んでいる。

「私は何もしてないけど、龍神様にはお礼を言わなくちゃね。
現代に帰る前に願いを一つ叶えてくれるなんて
龍神様は気前がいいなあ」
「みんなで温泉に行きたいと願って下さったのは神子様ですわ」

「ああ……こんなにゆったりした気持ちになれるなんて
何だか夢の中にいるみたい」
「蘭はいろいろ大変だったものね。
今日は女の子同士で楽しくやろうよ!」
「賛成!」
「素敵ですわ、神子様!」


岩壁で仕切られた反対側には、八葉がいる。

「あれは…神子殿たちのお声か」
「あかねも蘭も楽しそうでよかったな、頼久。
龍神様々だぜ。俺も温泉なんて久しぶりだ。
ん? 泰明、固まったまま何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「禊をしている」
「禊? ここは川でも滝でもなくて温泉だぜ。お湯で禊なのか?」
「水があたたかいか冷たいかの違いだけだ。
しかも、龍神が神子の願いに基づいて我々をここに運んだ。
潔斎せよということではないのか」
「のんびりしろってことだろ?
壁の向こうの笑い声を聞いてみろよ」

「なあ詩紋、あっちの声が聞こえるんなら、
こっちの声も向こう側に届くんじゃねえか」
「そうだね。呼んでみようよ、イノリくん」
「お〜い、あかね〜〜、聞こえるか〜〜!!」
「あかねちゃ〜ん、ボクの声、聞こえる〜!?」
「聞こえるよ〜!」

「ここは龍神温泉と言うのでしたね。
神子殿にふさわしい場所だと思います」
「そうだね。玉の肌を洗う滑らかな湯…
まさしく温泉水滑らかにして凝脂を洗う…というところか」
「友雅殿、不埒なことをお考えではないでしょうね」
「私をそんな無粋な男だと思っているのなら、
すぐに改めてほしいものだね、鷹通。
秘められた美しさに思いを馳せ、それを愛でる歓び…
これに勝るものはないのだから」

「………は…破廉恥な……」
「永泉、恥じらっているのか?」
「……いいえ…私は……その…恥じらってなど…」
「では、顔を赤らめ、胸を隠して身を縮めているのには、
他に理由があるのか」
「あの…私は…その……」
「どんどん奥へと身を隠そうとしているように見えるが」
「いえ……決してそのような…ことは……」

「泰明殿、永泉様は、湯帷子も湯もじも身につけずに湯を使うのは
初めてなのだよ。かく言う私も、同じなのだが」
「初めてだと隠れたいのか? よく分からない」
「す……すみません…泰明殿……」

「放っておいてやれよ、泰明。
でも永泉も、こんな広い風呂で端っこにいるなんてもったいないぜ」
そう言って、天真はすいーっと泳ぎ出す。
頼久が後を追った。
「天真、その泳法を教えてほしい。渡河の時に役立ちそうだ」
「いいぜ。まずは……」

「へえ〜、天真すげえじゃん」
「ボクも泳ごう」
詩紋はすいすいと泳ぎ始めた。
「わっ、詩紋泳げるのか?」
「え? イノリくんは泳げないの?」
「……オレさ、顔を水につけるのがイヤなんだ」
「あ、だったら、背泳ぎがいいよ。
まず、こうするんだよ」
詩紋は上を向いてぷか〜んと浮かんだ。
「おっ! それならオレにもできるぜ」
ぷか〜ん。
「次はこうやって足を蹴ってね」
ばしゃばしゃばしゃ
「よしっ」
ばっしゃばっしゃばっしゃ

ああ、何と楽しそうな♪……あれなら私にもできるかもしれません…。
ぷか〜ん
…………

「朱雀の二人は無邪気でいいですね」
「鷹通も遠慮せずに浮かんでくるといいよ。
せっかくの機会だから、私はゆっくり疲れを癒やすとしよう」

…………
ぶっぶふっ…
じたばたじたばた

「永泉、うつぶせになって浮かんだら息ができない」
ひょい
「あ、ありがとうございます、泰明殿。ああ、苦しかった……」

しかし、ぜえぜえと息をしながら顔を上げた永泉は、
信じられない光景を目にした。

泰明が、女湯との境の壁に取り付いたのだ。

永泉の声が通常に戻る。
「や、泰明殿、何をなさろうというのですか」
「静かにしろ、永泉」
「その壁を登ってはなりません! そちらには神子が!」



壁の向こう側では、湯気の中から思いがけない人物が現れていた。

「こんな所でお前達に会うとはねえ」
「シリン…なの!?」
「そうさ」
シリンは腕を組み、あかねたちを見回した。

「神泉苑で消えてしまって、どうしたのかなって思ってたの。
無事だったんだね」
シリンは馬鹿にしたように鼻で笑った。
「無事だったらどうだっていうのさ。
わけが分からないうちにここに運ばれてきたけど、
龍神ってやつも、けっこういいかげんだね」

「なぜこんな所に来たの」
「おや、ラン。さんざんお館様にいい顔しておいて、
今は龍神の神子の味方面かい? 気に入らないね」
「私も、あなたのこと前から気に入らなかったわ」
「フン、お互い様だね」

藤姫がシリンを見上げ、震えながらも健気に言い放つ。
「お…鬼、神子様に手出しは許しません」
「おちびちゃんがいるかと思えば、星の一族のお子様か。
きゃんきゃんと勇ましいことだねえ」

「シリン、せっかくの温泉なんだし、ケンカはよそうよ」
「あたしを馬鹿におしでないよ、龍神の神子。
小娘相手にケンカするようなシリン様じゃないんだ。
だってねえ…なにしろ…」
シリンは組んでいた腕を解くと、長い髪をばさりとかき上げた。
「相手がぺちゃんこ娘二人にお子様じゃあ、
まともな勝負にはならないからねえ」

「ええと……何を張り合うつもりなの?」
「ぺちゃんこむすめとは何なのでしょうか?」
「若さが妬ましいってことよ」
「なんだってえ!!」
「神子様、鬼が本気で怒ってます」
「若けりゃいいってもんじゃないんだよ。
この曲線美をご覧、お前達とは女としての格が違うんだからね」



「やはりそうか。……っ、永泉、その手を放せ」
「いいえ、それはできません! 泰明殿」

「どうしたのだね」
「や…泰明殿、何を!」
「泰明、のぞきなんて趣味悪いぞ」
「ぺたん×2と子供だろ? 止めとけ」
「そういう問題じゃないよ、天真先輩」

「気づいていないのか。
あちら側に鬼の女がいる。神子と話しているようだ。
耳を澄まして聞いてみるがいい」

湯の中からみんなが一斉に立ち上がる。
「シリンか! 神子殿が危ない!!」
「それを早く言え、泰明」
「すぐに助けに行くぜ!」
「うん!」
「待って下さい! 私達は…その…」

そこでみんなは気がついた。
「そうだね…。神子殿達も、私達と同じ姿…なのだろうね」
「………あ…」
みんなは互いに顔を見合わせ、すぐに顔を背けた。

湯気に視線を固定しながら、頼久が言った。
「鬼は、我々が動けないと見越して現れたのではないでしょうか」
イノリもそっぽを向きながら賛成する。
「そうだぜ! 遠慮している場合かよ」
「け…けれど、やはり…その……」
「だから、こっそり様子を見ようとしている。
邪魔をするな、永泉」

鷹通が眼鏡を曇らせたまま言った。
「永泉様、友雅殿ならいざ知らず、
泰明殿は不純な動機で行動する方ではないと思います。
ここは泰明殿を信じてお任せしてもよいかと」
「でも、もしあかねに気づかれたら、
一生口をきいてもらえないぞ」

「それはいやだ」
泰明は即答して壁から飛び下りた。

「天真、泰明殿を脅かしてどうする。
早く神子殿のご無事を確かめねば」
「泰明殿、陰陽の術で姿を見えなくするというのはどうだろうか?」

「それならできる」
泰明は印を結んだ。
とたんに、その姿が消える。

「泰明殿?」
「いるのか、泰明?」

「問題ない。岩を登っているところだ。
今、頂上に着い………」
しかし、その言葉が終わらない内に術が切れ、
泰明の姿が再び見えるようになった。
そして、
ドサッ!(落ちる)
ゴキッ!(岩にぶつかる)
ジャブン!(水に落ちる)と
音がして、泰明はみんなの前に落下した。

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「1」の皆様は全体的にシャイな気がします。
…と言いつつ、品のない話ですみません。

この話では、自分が描き手じゃないのが、ある意味、救い?です。
登場キャラは全員お風呂仕様の格好ですが、
文字だと具体的な映像は見えませんので。

2011.07.24 筆