初夢、初詣などなど、新年にちなんだテーマのSSSです。
ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。
「わあ、藤姫、とても可愛いよ!」
「これが神子様の世界の晴れ着…なのですね!
何て色鮮やかで華やかなんでしょう」
「気に入ってくれた?」
「もちろんです!
だって神子様とおそろいなんですもの」
「ふふっ、私たち、姉妹みたいに見えるかも。
「まあ、素敵ですわ!」
「さあ、晴れ着を着て初詣に行こう」
「み……みみ神子様!!
こんなに大勢の人が…………!!!」
「みんな初詣に来た人達だよ」
「それに、空は暗いのに周りはとても明るくて……
神子様の世界は不思議なことがたくさんあって驚くばかりですわ」
「あ……除夜の鐘が……」
「ああ……鐘の音は同じなのですね」
「さあ、お祈りしようか」
「ええ。神子様の幸せを、心から祈りますわ」
「まあ! あれが富士の山……ですか?
絵巻物で見るばかりでしたけれど、
本当の富士山は何と神々しいのでしょう」
「空が明るくなってきたね」
「ああ、初日が昇ります……」
「次は、福袋を買いに行こうよ」
「ふく…ぶくろ……?」
「とてもわくわくするものだから、楽しみにしていてね。
あ、その前に、洋服に着替えようか?
きっと似合うと思うな」
「ああ、とても楽しくて、まるで夢
………のよう………ですわ」
「うん、だから、めいっぱい楽しもうね」
「はい、神子様」
「買い物もいっぱいしたし」
「はねつきやかるたもいたしました」
「楽しいお正月だったね」
「ええ、神子様、私もこんなに楽しい新年は初めてです」
「藤姫、会いに来てくれてありがとう」
「神子様、招いて下さってありがとうございました」
「元気でね」
「神子様もどうぞお元気で」
* * * * * * *
「藤よ、何ぞ佳きことでもあったか」
左大臣はにこにこと笑っている愛娘に目を細めた。
「はい、お父様。
佳き夢を見ました」
「ほう、新年に吉夢とは悦ばしいことじゃ」
「私も、とても嬉しゅうございます」
藤姫は小さい手を胸に当て、
幸せな夢を思い返す。
* * * * * * *
あたかな腕の中で、あかねは微笑みながら目覚めた。
瞳を上げると、やさしい眼差しと出会う。
その眼差しの無言の問いかけに、
「とてもステキな夢を見たの……」
あかねはささやいた。
時空を越えて、不思議な縁は幸福を紡ぐ。