― 2016年 新年企画 ―

初夢、初詣などなど、新年にちなんだテーマのSSSです。
ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。




初仕事[3オールキャラ]


俺は手賀速家百八代目当主、手賀速射蔵。
伝統と格式に裏打ちされた凄腕のリスだ。いやスリだ。

相棒の足賀速家百八代目当主、足賀速射蔵と組んで
新年最初の仕事に向かう。

場所は鶴岡八幡宮。
初詣の人々でごった返している。
これ以上望めない好条件の仕事場だ。

とはいえ、混雑しているということは、
逃げにくい、ということでもある。

だが、俺には心強い相棒がいる。
それが、足賀速家百八代目当主、足賀速射蔵。
陰でこっそりハンザイに手を染めたりしない、
真っ当な相棒だ。

俺は伝統と格式に裏打ちされた凄腕の持ち主なので、
万が一にも気づかれるようなヘマはしない。
だが、万万が一、
つまり二万分の一または一億分の一、気づかれたとしても、
足賀速射蔵は俺の手から素早く獲物を受け取り、
持ち前の足の速さでスタコラサッサするのだ。

さて、俺は鋭い嗅覚で格好の標的を見つけた。

髪の長い若い娘。
高校生くらいか。
隣にいる同じ年頃の娘とおしゃべりに興じている。

通常期なら学生など狙わない。
だが、正月ともなれば、彼らのサイフはお年玉で肥え太るのだ。

伝統と格式は、学生相手でも容赦はしない。

そっと近づき、
サッと盗って、
スッと去る。

心の中でイメージを描き、俺は動いた。

そっと近づき、
サッと……………

あれ?

いつの間にか俺の周りは、
イケメンだらけになっている。
美女だらけの方がいいのに。

「おっと、そこまでだ」
「懐中物を狙うとはけしからん」
「卑怯な野郎に手加減はいらないんじゃない?」
「賛成ですよ。では、どうしましょうか」
「警察に突き出しましょう」
「そうだねー、でもその前にちょっとお説教したいなあ」
「それで……この者の心根が…直るだろうか」

「この男の仲間だ。こそこそと逃げようとしていた」
金髪の大男が足賀速射蔵の首根っこを掴んで引きずってきた。

イケメンたちは揃いも揃って美声だ。
美声の威嚇は効くなあ……。

「害されそうになったのは神子だよ。
神子が決めるといい」
最後に、真っ白な中華の王子様が現れた。
みこってのが、娘の名前のようだ。

するとみこは、俺と足賀速射蔵の前に立ち、
願ってもないご託宣を宣った。

「こんなことするなんて、
よっぽど困ってお腹も空いてたからだと思うんだ」

イケメンたちが、ないないない…と首を振るが、
みこが決めると決めたのはこいつらだ。
イケメンは顔と同じく読みも甘い!! 

当然俺は、はいはいはい…と頷いてみせる。

みこは続けた。
「私、おにぎりを作ってきたんだ。
みんなと食べようと思ってたけど、
あなたたちにあげる」

イケメンたちの顔色が変わった。
そんなにおにぎりを食べ損なうと悔しいのか。
食い意地が張ってるなんて、イケメンが台無しだ。

へいへいへい……ありがとうございますっと。

手賀速家百八代目当主の俺、手賀速射蔵と、
相棒の足賀速家百八代目当主、足賀速射蔵は、
差し出されたみこのおにぎりを受け取り、
口に放り込んだ。

!?!?!?!?!!!!!!!!!!!
…………………………
…………………………………
…………………………………………
…………………………………………………
…………………………………………………………

「ぐふっ……ず…すmまsnでsたぁぁっ!!!!!」
「ぐげっ……も…う二度t悪いkとはsまsんんんっ!!!!!」



こうして俺達は
新年初にして、実は人生初の「仕事」で失敗し、
スリへの転職はあきらめて
マジメに働くことにした。

やっぱり、マジメが一番だよね。





2016年お正月企画

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