夢喰観音・フクシュウ編 前編

泰明×あかね短編「夢喰観音」の話から数ヶ月後の
京ED後背景です。




はじめまして!
おいら、子バクです!

まだ小さいけど、イチニンマエのバクなんだよ。
よろしく!!

あ、いけない。
今はオンミツ行動中だったんだっけ。
大きな声なんか出したら、アイツに気づかれちゃう。


ぺたん…ぺたん…ぺたたたた…
きょろきょろ……
こっそりこっそりこっそり…
もぞもぞもぞ

よしっ! センニュウ成功だ!
ここが、デンセツの長老様を倒したレイコクな陰陽師のシンシツか。

よかった…。今はぐっすり眠っているみたいだ。

あの陰陽師にだけは関わっちゃダメダって、
母ちゃんや仲間達に泣いて止められたけど、
デンセツの長老様を倒されてダマって引き下がったら、
バク一族は臆病モノばかりだと思われちゃう。

だがら、おいら、デンセツの長老様のカタキを討って、
世界にヘイワを取り戻すんだ!
敵はもう、おいらの目の前にいる。
怨霊にまで超進化した長老様を倒したんだから、
こいつがすごくキョウアクな陰陽師だってことは、確かなジジツだ。

でもおいら、怖くなんかないぞ!
ぶるぶるぶるるぶるるるぶるぶるぶぶぶるぶるぶるぶる
こっこれは、むしゃむしゃしゃぶるいなんだから、間違えないでねっ。

おいっ、キョウアクな陰陽師っ!
おいらが来たからには、もうマクラを高くして眠れないぞ。
覚悟するがいい、ふあはっはっは
っはっくしょん!

わっ! 気づかれた!?

あれ、大丈夫みたい。
意外といいかげんなヤツなんだな。
よかった。

さて、夢を喰ってやるぞ〜〜〜〜〜。
口を大きく開けて、こぼさないように注意しながら、
よく噛んで食べるんだ。

まずは、そうっと近づいて…と
ぺたたたた…

あれ? 隣に、とってもきれいな夢が浮かんでる。

わあ、夢を見てるのは、とてもかわいいおねえさんだ。

ええと…
どーしよーかなー

おいら、好き嫌いしないから、きれいな夢も食べられるし…
キョウアクなヤツの夢の前に、こっちのかわいい夢を、
ちょっとだけ食べてみたいな〜〜。

ふらふらふら…
なんか、ひきよせられちゃうよ…
ぺたたたた…

いただきま〜〜す!
あ〜〜〜〜〜〜ん!

むぎゅっ!
ぎゃっ!!!

だ、誰だ、おいらのシッポを掴むのは
…って、そんなことするのは一人しかいない…

ぽいっ!
うわっ
投げられた。
おねえさんが遠くなるぅ



べちっ!

ぎゃっ! 痛っ!

ひどいよひどいよっ!
シッポを掴んで投げるなんてっ!

せっかくおねえさんのすぐ側まで行ったのに、
きれいな夢を食べるのをジャマするとは、
なんてヒドいヤツなんだっ!!




しーーーーーーーーん




な、何?
コイツ、まだ眠ってる?
眠りながら、おいらをおねえさんから遠ざけたのか?

いいドキョウじゃないか!
そっちがそのつもりなら、
おいら、堂々とお前の夢から喰ってやる!

どんなキョウボウな激辛味でも怯んだりしないからな!

あれ? でも

こいつの夢って…
キョウアクなヤツの夢に
……ふさわしくないような…
………フンイキだ。

桃の花みたいな色で、
ふわふわしてて、
甘そうで、
ムシバになるかもしれないなあ。
何か、見てるだけでおいら、どきどきしてきたぞ。

…………あ!…わわわ!!!………
これって、もしかして
十八歳未満の子バクが食べちゃいけない夢?

ど、どーしよー。
バク一族のオキテは守らなくちゃいけないし…。

おろおろおろおろおろおおろおろろお

むんっ!
カタキを前にして引き下がったらオトコじゃない!

ぴょん!

ええいっ!!
夢喰いコウゲキを受けてみろっ!!

あーーーーーーん
ぱくっ!

わああ、すごい……
ぽっ……
初めての味だぁ……
ぽぽぽっ……

あれ?
バク一族ジマンの地味な毛色が…
こいつの夢と同じ桃色に……

ど、どうしてくれるんだ!
キョウアク陰陽師っ!!
おいら、こんな毛色じゃ故郷に帰れないよぅ……

もうっ! こうなったら、最後まで喰ってやる!!

むしゃむしゃ
うわ…何だか、身体中がくすぐったいよぅ
むずむずするぅ…
どきどきするぅ…

ぽぽぽ
でもがんばるっ!!
むしゃむしゃ

ぶぉわっ

わあっ、おいらのつやつや剛毛がバクハツした!

むし……
……ゃ…
………
?????????

あれ、どうしたんだろう?
夢が消えたよ。

むんず

わっ!
こ、こいつ、目を覚ましたのか!!

じたばたじたばた!!!

うわああーー!!
きょうあくなおんみょうじが
こわいかおでおいらのことにらんでるぅぅ!!
だれかぁぁぁ!! たすけてええーーー!!!


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夢喰観音 第1話

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2011.03.05 筆