― 2013年 新年企画 ―

ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。




開店! バー”Hey-K”


「店の前に、開店を待っている客の列ができてるぜ」
通用口から将臣が入ってきた。

「せっかく来てくれているのに待たせるのは悪いですね。
少し早めに店を開けてはどうでしょうか」
カウンターの中でグラスを磨きながら経正が言う。

「ああ、そうした方がいいだろうな。
だがそれにしても経正、バーテンダー姿がキマッてるじゃねえか」
「ありがとうございます。
この装束は動きやすくてよいですね。
実は、自分でも気に入っているのです」

と、奥のソファから不機嫌そうな声が異論を唱えた。
「これはまた、経正殿も異な事を仰る。
風雅の欠片もない装束を好まれるとは信じられません。
しかも、それは下賤の者たちに奉仕する者が纏うものと聞きました。
平家の誇りを無くされたのですか」

「働く気がねえなら口は閉じてろ、惟盛。
少なくとも店の邪魔だけはするなよ」
「フン、あなたに指図される覚えはありません」

「将臣殿、開店が……早まったそうだが」
「おう、敦盛か。頼むぜ」
「だが……私のつたない笛で…客人を迎え入れてよいものだろうか」
「お前は笛の名手じゃねえか。
開店チラシ巻く時にやった路上ライブは、大受けだったろうが」

「え……あ……あれは…その……私の笛ではなく、
経正兄上の琵琶が…素晴らしかったからだと思う。
だが、知盛殿と重衡殿が舞った時は…もはや阿鼻叫喚で……。
なぜこの世界の女性は……あのような声を上げるのだろうか」

「深い意味なんて、ないさ。
あれは獰猛な…悲鳴だった」
「お、知盛か。サンキューな。
路上ライブはいい宣伝になったぜ」
「クッ…そのために、俺達が駆り出されたのだろう?
還内府殿は、商いの道にも長けている…か」

その時、慌ただしく重衡が入ってきた。
「遅くなりました。
隣で少々残業をしておりましたので」

「昼は陰陽師カフェに勤め……夜はバーで働く。
我が弟は、勤勉……だな」
「私は泰衡様にも恩ある身ですので、
ご命令とあらば、お仕えするのが勤めと心得ております」

「で、どうだったんだ、あっちの店は」
「……申し訳ありません。
二つの店で働く者として、
双方の内情を軽々しく口にすることはできかねます。
どうかご理解下さい、将臣殿」

「まあよい。
義理堅いところが重衡の美点よ」
清盛がどこからともなく現れた。

将臣は店のドアに手をかける。
「さあ、始めようぜ!
前宣伝は成功したが、本当の勝負はこれからだ」

「我が平家の総領の言葉、心して聞いたか。
源氏は奥州と組んで、我がバーを潰すつもりよ。
決して負けてはならぬぞ。
いや、今こそ平家の力を見せつける好機。
我が一門は一騎当千のつわものばかりじゃ。
皆の働きに期待しておるぞ!!」

つわものの顔ぶれ:
惟盛
知盛
重衡
経正
敦盛
将臣
清盛




2013年お正月企画

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2013.01.01 筆 03.23 [小説]に移動