― 2015年 新年企画 ―

初夢、初日の出などなど、新年にちなんだテーマのSSSです。
ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。




初夢 ・ 泰明


「おめでたい初夢といえば、一富士二鷹三なすびなんですよ、泰明さん」

「一富士二鷹三なすび……?」
泰明は首を傾げた。

夢に好ましい順があるとするなら
一神子 富士 二神子  三神子 なすび が正しい。
いや、神子>>>>>>>>>>富士鷹なすびだ。

そもそも神子をなすびなどと比べられるものか!

だが、あかねは富士と鷹となすびの出てくる夢がよいと言っているのだ。
その願いは叶えたい。

しかし悪夢を封じる術はあるが、
望み通りの夢を見るように操る術は無い。

そう伝えて詫びると、あかねはにっこり笑って首を振った。
「気にしなくていいですよ、泰明さん。
どんな夢になるか楽しみに寝ることにします」

「分かった、神子。よき夢を……」
「おやすみなさい、泰明さん」



愛らしい寝顔で、あかねは眠っている。
よい夢を見ているのか、唇には小さな笑み。

しかし泰明はなかなか寝付けなかった。

一富士二鷹三なすび……
どれか一つでもよいと言うが、
全部だとさらにめでたいのだろうか。

富士の山とは、どれくらい大きいのだろう。
この季になすびは採れない。
それは無視してもかまわないということか。

様々な考えがせめぎ合ってなかなか眠れず、
泰明は眼をぱちりと開いた。

しかし見えたのは閨の暗闇ではなかった。

周りには見渡す限りの原が広がり、
その彼方に、天をつくばかりの大きな山がそびえている。

――あれは……富士の山なのか?
絵巻で見た通りの形だ。

と、山陰から黒い影が現れ、こちらに向かって飛んできた。
近づくにつれ、翼を広げた鷹だと分かる。

だがそれは、ただの鷹よりずっとずっと大きい。
なぜなら、鷹の背には、あかねが乗っているのだ。

「泰明さん!!!」
「神子!!!」

鷹は泰明の元にあかねを送り届けると、
あっという間に飛び去っていった。

あかねはにこにこ笑いながら、
泰明に食べ物の器を差し出した。

「泰明さん、茄子のお漬け物です。
はい、あ〜んして下さい」



「むにゃ……泰明さん………」

あかねの寝言で、泰明は目覚めた。

「もうお腹いっぱいです……むにゃむにゃ……」

泰明の夜着の袖をきゅっと掴んで、
あかねは幸せそうに眠っている。

そうか………。
富士、鷹、なすび。
神子のおかげで、私は吉夢を見たのだ。

神子は、何の夢を見ているのだろう。

その夢を知ることはできないが、
あかねが幸福な夢の中にいるのは分かる。

――目覚めてもまた、お前が幸せであるように……
私は今年もお前を守り、お前と共に歩もう。

神子……愛している。

泰明はあかねの手に自分の手を重ねた。

今宵はもう眠らなくてもいい。
神子とこうしているだけで、
私は幸福だ。





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