ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。
夢とうつつの狭間、
心地よいまどろみの中に
友雅はいる。
夢の余韻に身を任せてたゆとう
暁の静寂に守られた束の間のひととき。
もう少しこのままで………と
ゆらゆらと願うかたわらで
うつつの泡沫が、まどろみの底を離れて
一つ、また一つ……目覚めの水面へと浮かび上がっていく。
泡沫を追って見上げれば、眩く白い光――
友雅は、ゆっくりと瞼を開いた。
身を起こし、髪をかき上げて蔀を開くと、
外は雪の降りしきる薄明かりの夜明け。
新玉の年の朝だ。
身を切る寒さの中で、友雅の頬に笑みが浮かんだ。
――君は無邪気に言っていたね。
「おめでたい初夢は、
一富士二鷹三なすび…ですよ、友雅さん」……と。
どうやら私は、それよりもよい夢を見たようだ。
火桶を運んできた家人は、
身支度を調えた友雅を見て驚いた。
今日の参内はもっと遅い刻限と聞いている。
さりとて、女人の元に通うには早すぎる。
「どちらへ……」
怪訝そうに問うた家人に、友雅は小さく微笑んで言った。
「うつつの夢に、逢いに行くのだよ」