― 2015年 新年企画 ―

ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。




初夢 ・ 友雅



夢とうつつの狭間、
心地よいまどろみの中に
友雅はいる。

夢の余韻に身を任せてたゆとう
暁の静寂に守られた束の間のひととき。


もう少しこのままで………と
ゆらゆらと願うかたわらで
うつつの泡沫が、まどろみの底を離れて
一つ、また一つ……目覚めの水面へと浮かび上がっていく。

泡沫を追って見上げれば、眩く白い光――


友雅は、ゆっくりと瞼を開いた。


身を起こし、髪をかき上げて蔀を開くと、
外は雪の降りしきる薄明かりの夜明け。

新玉の年の朝だ。

身を切る寒さの中で、友雅の頬に笑みが浮かんだ。

――君は無邪気に言っていたね。

「おめでたい初夢は、
一富士二鷹三なすび…ですよ、友雅さん」……と。

どうやら私は、それよりもよい夢を見たようだ。




火桶を運んできた家人は、
身支度を調えた友雅を見て驚いた。

今日の参内はもっと遅い刻限と聞いている。
さりとて、女人の元に通うには早すぎる。

「どちらへ……」
怪訝そうに問うた家人に、友雅は小さく微笑んで言った。

「うつつの夢に、逢いに行くのだよ」




お正月話の中に一話くらいは、こんなのがあるのもいいかな……と。


2015年お正月企画

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