― 2015年 新年企画 ―

初夢、初日の出などなど、新年にちなんだテーマのSSSです。
ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。



守れ! 女子会


神泉苑に、異世界への扉が開いた。

あかねの世界ではなく、
天空龍神温泉旅館へと通じる扉だ。

あかねの「年越し女子会」をやりたい、
という願いに、龍神が応えたのだ。

同行するのは
藤姫、藤壺中宮、弘徽殿皇后の三人。

「行ってきます!」
「楽しんでくるのだぞ!」
八葉ばかりでなく帝も神泉苑に足を運び、
四人を見送った。

京を守護する龍神の招きで后を送り出すのだ。
帝として礼を尽くすのは当然のこと。

だが、事件が起きた。

「ほう、これが龍神へと通じる扉か」
アクラムが現れた。

「つまり、この先に行けば、お館様は龍神の力を得られる」
イクティダールも現れた。

「さっさとそこをどきな。
お館様がお通りになるんだからね」
シリンは居丈高に命令した。

「……ええと……もう言うことがないじゃないか!
お前らみんな邪魔なんだ!!」
セフルは怒っている。

「消えろ、鬼。
この先に龍神はいない」

「くだらぬ嘘を言うな、地の玄武。
この扉もその向こうにあるものも、
全ては龍神が作ったのだ。
つまり龍神の力の具現化に他ならぬ」

「誤解しているようだね。
この先に行っても力など得られはしないのだよ。
無駄足になるだけだ」

「だが、その温泉とやらには、
神子がいるのだろう。
一石二鳥とはこのこと」

「アクラム、てめえ……!!」

「そしてどうやら……」
アクラムの仮面が帝を見た。
「内裏の者も神子と同行しているようだな」

帝はずいっと前に進み出る。

「お前が鬼の首領、アクラムか。
扉の向こうには行かせぬ!」
凛とした声が、神泉苑に響いた。

「ならば、止めてみるがいい」

戦いが始まった。




その頃、あかね達は――

天空の露天風呂でのんびりしていた。

「雲の上で湯に浸かれるなんて夢のよう」
「あかね殿、ありがとう。
とても楽しいわ」
「これも神子様が龍神様に願ってくれたからこそですわ」

「年越し女子会ができるなんて、私も本当にうれしいな。
龍神様にみんなでお礼を言わなくちゃね」




一方、扉の前では戦いが続いている。

龍神に関することだけに、帝はお忍びで来ている。
護衛もごく僅かだ。
選ばれた者達だが、鬼が相手となると、ほとんど戦力にならない。

戦いは八葉が受け持っているが、神子の不在は大きい。

「戯れ合いはそろそろ終わりにしようか」

それまで冷笑を浮かべて戦いを見ていたアクラムが、
扉に向かって歩き出した。

「雑魚は要らぬ」
掌を向けると、帝の護衛達がばたばたと倒れる。

「帝も、要らぬな」

「主上!」
永泉と友雅が帝の前に飛び出し、
泰明が術を放ち、頼久がアクラムに斬りかかった。

「それで止めたつもりか……」
アクラムの唇が、歪んだ笑みを形作り、
凄まじい力が放たれようとした瞬間………



















空から雄叫びと共に牛が急降下してきた。

牛は降ってきた勢いのまま、
あっけにとられたアクラム、イクティダール、シリン、セフルを
次々に空高くはね飛ばし、
帝に向かって「んも…」と啼くと、
再び空の彼方へと去っていった。

「次こそ〜〜〜〜〜」
アクラム達も、キラリンと光りながら、
飛んでいく。

一瞬の出来事に、皆呆然としたが、
鬼との戦いが終わったことだけは間違いない。

静けさが戻り、倒れていた護衛達も元気よく立ち上がる。

「牛は、何と言ったのか」
帝の問に、泰明が牛の言葉を翻訳して伝える。
「『友の危難には世界の果てからでも駆けつける』
と、言っていた」
「おお……牛よ!」

頼久は難しい面持ちで、アクラム達の消えた方をじっと見ている。
「どうした、頼久」
「天真か。鬼の引き際が気に入らないのだ。
キラリンと光って空を飛んでいくなら、
素直に、『やな感じ』と言うのが悪役の務めでは……」
「年季の入った悪役みたいなこと言うなよ、頼久」




その頃、あかね達は――

部屋でのんびりくつろいでいた。

「うの!! 私、もう残り一枚ですわ」
「まあ、また中宮様の勝ちかしら」
「お姉様、強いわ」
「初めてなのに、みんな楽しんでくれてうれしいな。
通りすがりの攘夷志士さんがカードをくれたおかげだね」

「あかね殿の世界には、面白い札遊びがあるのね」
「内裏に戻ったら、同じものを作ってみようかしら」
「ああ、それはよいお考えですわ、皇后様。
ぜひまたお手合わせをいたしましょう」
「ふふっ、今度は負けませんわよ」

「ねえ、神子様、私も土御門でまたご一緒してもいいでしょうか」
「そうだね、藤姫。女房さん達も誘って楽しく遊べるといいな」
「まあ、藤姫だけあかね殿とうのをするの?
そんなのずるいわ。ぷいっ!」

こうして、楽しい女子会トークは日の出まで続いたという。

一方、徹夜で扉を守った八葉もまた、
揃って神泉苑で初日の出を迎えたのだった。


あけまして、めでたしめでたし!





なぜ帝の「友」なのかは、七夕SS 「星降る夜に」をご覧下さい。


2015年お正月企画

[泰明]  [友雅]  [アクラム](オールキャラ)


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2015.01.01 拍手にアップ  01.12 [小説]に移動