初夢浮橋

2010年のお正月企画です。
「1」と「3」の同じポジションのキャラ同士が交わす
少しおかしな会話SS集。
ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景、時代設定などなど、ご想像のままに。



天の白虎

鷹通&譲


「鷹通さん、何を熱心に書いているんですか」
「ああ、譲殿ですか。
これは吉書――筆始めです」
「つまり、書き初めってことですね。
何か考えながら書いていたみたいですが、
お手本…とかは無いんですか?」
「ええ。習わし通り、めでたい漢詩を書くのもよいのですが、
今年は、新たな年の初めに、
心に思うことを形に表してみようと思ったのです」

「いいですね。何て書いたのか、見せてもらえますか?
ええと…」

― 品行方正 ―

「鷹通さんらしいですね。
ええと、こっちには」

― 謹厳実直 ―
― 清廉潔白 ―
― 一意専心 ―
― 思慮分別 ―

「やっぱり、人柄って現れるんですね」
「譲殿も書いてみますか?」
「ありがとうございます。
でも、何て書こうかな」
「思ったことをそのまま書けばいいと思いますよ」

「じゃあ」

― 艱難辛苦 ―

「……年頭の言葉としては、ちょっと微妙かな」
「いいえ、苦難に負けないという、
譲殿の強い意志が感じられますよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。
確かに俺、先輩のためならがんばれますから」

「そうですよね、八葉は神子殿のためのものです。
はあああ……」
「鷹通さんがため息なんて、珍しいですね。
どうしたんですか?」
「すみません。
これを書いたのですが、少し悲しくなりまして」

― 長幼の序 ―

「もしかして、鷹通さんはあの人を思い出したんですか…」
「ええ…私とは天地の対。
八葉の中でも最年長なのですが…その、どうも…」
「あの人は、鷹通さんの書いたものとは正反対…かもしれませんね」
「同じ最年長でも、リズ先生は浮ついた所など無い方で、
少しうらやましいです」
「だからって、軽々しく先輩を肩に乗せてもいいってことはない!」
「?」
「すいません。
でも、俺の天地の対だって……」

「…………」
「…………」

「お互い、気持ちが乱れましたね。
もう一度、集中しましょう」
「そうですね」

― 粉骨砕身 ―
― 百八煩悩 ―
― 切歯扼腕 ―
― 戦々恐々 ―
― 不撓不屈 ―
― 臥薪嘗胆 ―
― 栄枯盛衰 ―
― 悪戦苦闘 ―
― 青息吐息 ―
― 前途多難 ―


「譲殿、何だか、悲しくなってきたのですが」
「俺もです」




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