初夢浮橋

2010年のお正月企画です。
「1」と「3」の同じポジションのキャラ同士が交わす
少しおかしな会話SS集。
ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景、時代設定などなど、ご想像のままに。



天の玄武

永泉&敦盛


夜の空に妙なる笛の調べが二つ、重なり合って響いている。
澄み切ったその音色に、風すらも吹くのを躊躇い、
草も木も静かに耳を傾けているかのようだ。

やがて静かに、楽の音は止まった。

「敦盛殿の笛の音、惚れ惚れいたしました」

「いえ…そのような。私こそ…永泉様に合わせるのが精一杯で…」

「敦盛殿は息を合わせるのがお上手なのですね。
初めて一緒に吹かせていただいたというのに、
とても心地よく奏でることができました」

「そ…そうだったのですか。
私は…何も考えずに吹いておりました。
きっと、昔…兄とよく一緒に楽を奏していた時の感覚が
今も残っているのでしょう」

「兄上様とご一緒に? ああ、うらやましいことです。
さぞ楽しかったことでしょう」

「はい…私の兄は琵琶の名手で…
私に楽の手ほどきをしてくれたのも…兄でした」

「よい兄上様だったのですね…。
私も、幼い頃はよく兄と遊んでおりました」

「永泉様の…というと、今上帝であらせられるお方…でしょうか」

「はい…幼い頃より、帝にふさわしい器と噂され、
その通りに、立派な帝となっていらっしゃいます。
ふがいない私は、ただ流されるばかりで…」

さやさやと風が吹き、雲間から月が現れた。

「今宵は…望月か…」

「何と清らかな光でしょう…」

「永泉様……兄上と私は…今は進む道を違えました。
けれど…離れてしまっても、思い出が消えることはありません。
だから…兄上も同じ思いでいると、信じています。
畏れながら…きっと帝と永泉様も…」

「敦盛殿……」

「もう一曲、ご一緒していただけないでしょうか…永泉様」

「ありがとうございます、敦盛殿。
喜んで……」




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