重衡殿懺悔録


お断り


最初にお断りしておきます。
「十六夜記」未プレイの方は、ネタバレになりますので、ご注意下さい。
そして、この一文が、小説部屋ではなく保管庫に格納されていることからお分かりの通り、
これは小説ではありません。
また、期待して読み始めた神子様には申し訳ないことですが、
懺悔しているのは銀ではなく、筆者です。
だったら紛らわしいタイトルつけるな・・・ですが、気に入ってるもんで・・・(苦笑)。

ここで懺悔しているのは、「重衡殿被囚」で並べ立てた嘘八百。
罪滅ぼし(?)に、本当は「平家物語」本編ではこうなっている、というのを、
「重衡殿被囚」のストーリーに沿って書きました。

ですので、興味の無い方には退屈この上ないものになることと・・・。
あくびの前に早めの撤退をお勧めします。→ [帰る]

けれど、平家の解説だけでしたら、専門的なサイト様がいくらでもありますので、
ここでは現場からの実況リポートという形でお送りしたいと思います。
不慣れな新人アナウンサーと、解説役は恒平好子先生(@「重衡殿被疑」)という、
不安感漲る組み合わせで、まずは「生田」から!



生 田


壁野アナ:ここ生田では、激しい源平の戦いが続いております。
      あ、申し遅れました。私、中継現場担当、アナウンサーの壁野です。
      新人ですが、がんばりますのでよろしく。
      本日は解説に、恒平好子先生をお迎えしています。
      恒平先生、よろしくお願いします。
恒平好子:ここここちらこそよろしくおねがいします。
壁野アナ:早速ですが、今は源氏が優勢ですね。
      源義経の奇襲が功を奏したといえますが、この状況には、
      戦場でゆるんでいた平家側にも問題があると思うのですが。
恒平好子:そこなんですが、じつはこのとき、ごしらかわいんからていせんしじが
      へいけにだされていたんです。ですので、へいけがわとしてはりんせんたいせいを
      とるわけにもいかなかったんですね。
壁野アナ:先生、少し緊張されてますか。漢字が全く無くて読みにくいんですが。
恒平好子:すみませんすみませんすみません。重衡さんがここで生け捕りになるかと思うと
      理性と漢字がセットで飛んでいってしまって・・・ぐすぐす・・・。
壁野アナ:ひらがなばかりでしたが、先生から重要な指摘がありました。
      休戦指示を無視して源氏が奇襲・・・って、
      まるっきり「福原事変」ではありませんか。
恒平好子:そうなんです。「無印3」は、「一ノ谷の戦い」を「三草山・・・」と「福原事変」に
      分けているんですが、「十六夜記」では、ヒノエくんの提案で
      一気に源氏軍が侵攻していきますね。
      どちらかといえば、史実に沿っているのは「十六夜記」・・・ぐすぐす・・・の方です。
壁野アナ:やっと先生に解説者の役割を果たして頂けたようです。
      え?実況はどうした・・・?
      あ、すみません。ディレクターの指示をつい復唱して・・・。
      え?復唱も余計だ?
      すみませんっ!ええと・・・今は・・・
恒平好子:きゃあああああ!!
壁野アナ:どうしましたっ?!
恒平好子:重衡さんが追いかけられて・・・
壁野アナ:ええと、敗色が濃厚な中、副将軍重衡は・・・がふっ!!
恒平好子:「重衡さん」、または「本三位の中将殿」とお言い!!
壁野アナ:・・・・・・急にキャラを変えないで下さいよ。
      今、重衡・・・さんは馬で逃げています。お供が一人付いていますね。
恒平好子:彼は後藤兵衛盛長です。重衡さんの乳母子(めのとご)に当たる人です。
      重衡さんの乳母の、本当の息子ということですね。
      本来なら、血を分けた兄弟よりも結びつきは深いはずなのですが・・・ぐすぐす。
壁野アナ:重衡・・・さんを追いかけているのは、梶原景時の息子の景季と、
      庄四郎高家です。
恒平好子:よく名前がわかりますね。
壁野アナ:この日に備えて、死神と目の取引をしてきましたから。
恒平好子:そういうプロ根性、嫌いではありませんわ。
壁野アナ:だからぁ、ころころキャラ変えないで下さいよぉ。
恒平好子:きゃあああああ!!
壁野アナ:今度はどうしました?
      え?現場から目を離すな復唱もするな・・・?
      ・・・・・・・・すみません。
恒平好子:重衡さんの馬が景季に弓で射られて・・・。
壁野アナ:おおっ!梶原景季、動物愛護の精神がないのかぁぁっ!
      ここは当然、乳母子の盛長が、自分の馬を主たる重衡さんに差し出す所ですね。
恒平好子:ええ。自分は逃げる手段がなくなりますから、その場に残って
      討ち手を食い止め、主が逃げ延びられるよう、手助けするのがセオリーです。
壁野アナ:それも、あんまりな話ですね。乳母子愛護の精神は・・・
恒平好子:きゃあああああ!!
壁野アナ:ああっ!盛長が、重衡さんを見捨ててそのまま逃げたぁっ!
      重衡さん・・・呆然としています。
      ここに来ての味方の裏切り、これは相当効いてますね。
恒平好子:わたしっもりながをぶんなぐってくるっうまもつれてかえるっ
壁野アナ:わっ!だめですっ!歴史への干渉はいけません!!
恒平好子:ああああしげひらさんがつかまったたかいえのばかかげすえのばかぁぁぁ
壁野アナ:・・・仕方ないわ・・・。ゴキィィィン!! (←100tハンマー)
恒平好子:ぐふっ
壁野アナ:重衡さん、自害を試みるも果たせず、
      庄四郎高家によって捕らえられ、馬に繋がれました。
      現場からの中継は、解説者の理性と漢字と句読点が飛んだため、
      これで終了します。



東下り (1)


壁野アナ:あれ?ここって、京じゃないですね。
      「重衡殿被囚」では、確か京で梶原景時が重衡の
恒平好子:(ぎろっ!)
壁野アナ:重衡さんの詮議に当たっていたと思うんですが。
恒平好子:あれは大ウソですから。
壁野アナ:なあんだ。で、ここはどこでしたっけ。
      え?解説者に場所を聞いてどうする・・・?でも、 忘れちゃったものは仕方ないし・・・。
恒平好子:ここ、讃岐八島(屋島)では、平家の主立った面々が顔を揃え、
      話し合いをしています。
壁野アナ:東下りっていうのに、西に来ちゃいましたね。
恒平好子:ええ、重衡さんと三種の神器を交換せよと、実際に後白河院から、
      院宣が出されたんです。
      さすがに院宣には逆らえませんから、重衡さんも書状を書いています。
壁野アナ:それにしても、先生今日は落ち着いていますね。
恒平好子:だって重衡さんがいないんだもん。 来るんじゃなかった・・・。
壁野アナ:え?よく聞こえないんですが。 私だって来たくなかったわよ・・・。
        こんな地味な会議、どうやって実況すればいいのよ・・・。

      院宣と重衡さんの書状を読んで、平家一門としてはどう対応するか。
      今行われているのは、それを決める話し合い、というわけですね。
恒平好子:ぐすぐす・・・やっぱり、断るしかない・・・って、みんな言ってる。
壁野アナ:さすがに、一門の拠って立つ三種の神器を手放すことはできそうもありません。
      おおっと、しかしここに、尼御前が乱入してきました。
恒平好子:お母様、がんばって・・・。
壁野アナ:いつから尼御前の子供になったんですか。
恒平好子:重衡さんのお母様なら、私の親も同然。
壁野アナ:はいはい、わかりました。
      二位の尼、泣き崩れていますが、決定は覆らない模様です。
恒平好子:うわぁぁぁ・・・えーーん、えーーん・・・
壁野アナ:解説者が泣き出したため、八島からの中継を終わります。
      あーやれやれ



東下り (2)


壁野アナ:(ささやき声で)舞台は鎌倉へと移動して参りました。
      只今、源頼朝と平重衡・・・さんが相対しています。
      源氏の御家人も居並ぶ中、緊張感はいやが上にも高まってきました。
      今回も中継は、解説に恒平好子先生、アナウンサー壁野でお送り致します。
      恒平先生、本日もよろしくお願いします。
恒平好子:(ささやき声で)ここここちらこそよろしくおねがいします。
壁野アナ:ちぇっ、コピペのセリフか。
恒平好子:なにかぶれいなこといいました?
壁野アナ:い、いいえ、ちょっとマイクテストです。それより、もう3回目ですから
      そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。
恒平好子:・・・しげひらさんがとうとうかまくらおくりになってしまって・・・ぐすぐす
壁野アナ:放っとこう・・・。
      ええと、重衡さんが何か言っていますが・・・あの・・・あらららら!!
      重衡さんて、かなりいい男です。(ぽっ)
      この前は甲かぶってたし、遠目だったからよく見えなかったけど・・・
      やだ、あたし、どうしうよう・・・(ぽぽぽっ)
恒平好子:今頃お分かりになりましたの?伊達に牡丹の花に例えられていたわけでは
      ありませんのよ。本っっ当に未熟者ですわね。
壁野アナ:はいみじゅくものでしたごめんなさい
恒平好子:前に出た、三種の神器との交換という話は、平家側が蹴ってしまいました。
      成立するはずもない話でしたけれど。
壁野アナ:おおっ!解説者が復活しましたっ。
      え?解説者を実況しなくもていい?
      すみません・・・。
      ええと、頼朝の、南都焼き討ちについてのキツイ言葉に、
      重衡様は堂々と受け答えをしています。
      その潔い様子に、梶原景時が、「あっぱれ!」と言って涙を流しています。
      並み居る御家人も泣いています。
      重衡様は、頼朝以下、鎌倉武士のハートをガッチリ掴んだ様子。
      ええ、もちろん私のハートも、もう重衡様のと・り・こ! きゃっ!

ブツッ!!ザーザーザー
現場からの中継は、中継器トラブルにより、続行不能となりました。
お聞き苦しい発言がありましたことをお詫び申し上げます。




白 露


壁野アナ:いつクビになってもおかしくない壁野です。
      今回は、酒宴の席からお送りしておりますが、私、実況に徹していますので
      一滴たりとも呑んでいません。
      え?当たり前のこと言うな?
      すみません・・・。
      今回で、実況中継も最後となりますので、がんばります。
恒平好子:壁野さん、気付いてますか?
      重衡さんの男っぷりが、さっきより上がっているでしょう。
壁野アナ:あ、そういえば、すっきりきれいになったような。
恒平好子:あそこで重衡さんにお酌をしている女性が、湯殿のお世話もしたんですよ。
壁野アナ:ななななんですってぇぇぇ?!
      文句なしの美人だわっ!
      ターゲットスコープオープン!死に神アイ、スイッチオン!
      名前は千手っていうのね。
恒平好子:鎌倉殿に召し置かれている白拍子とか、北条政子付の女房とか、
      正体については、いろいろな説のある人です。
壁野アナ:この酒席は、重衡様のために設けられた、と言っていいんでしょうか。
恒平好子:重衡さんはとても辛い立場にあるわけで、
      頼朝の前では一門の将らしく、堂々とした態度をとってはいても、
      気持ちは大層落ち込んでいます。
      ですので、頼朝から重衡さんのお世話係を任された、
      狩野介宗茂が、心づくしの酒宴でおもてなしをすることにしたんです。
      言ってみれば敵同士の関係なのに、そうしてあげたい、と思わせる所が
      重衡さんの魅力ではないでしょうか。
壁野アナ:激しく賛成します。
      え?宴席の実況?わかってるわよ。
      宴の参加者は10人以上はいるでしょうか。とてもにぎやかな様子です。
      けれど、肝心の重衡様、あまり楽しくもなさそうです。
      これは、知らない人ばかりの飲み会が面白くないのと同じでしょうか。
恒平好子:しかも、あか抜けない東国武士の宴席ですし。
壁野アナ:あ、千手が何か歌い出しました。退屈しそうな、のんびりした歌です。
恒平好子:それでも、この頃の流行歌なんですよ。
      しかも、千手は歌詞にメッセージを託しているんです。
      本当に言いたいのは2コーラスめだけれど、1コーラスだけ歌うとか。
壁野アナ:それでは、肝心なことが伝わらないですよ。
恒平好子:ところが、それが分かってしまう所がすごいんですよ。
壁野アナ:重衡様が歌っています・・・。
      あ、琵琶も弾き始めました。
      体育会系と思ってましたけど、文系もいけてます。

恒平好子:殿上人のたしなみですから。
壁野アナ:ところで、歌の意味は何なんですか?
      重衡様、ちょっと楽しそうな感じですけど。
恒平好子:重衡さんの歌は、はやり歌じゃなくて、喩えて言えばドイツリートですが・・・
      何と、千手に告ってます。
壁野アナ:えええええ!!!ワタシニホンゴシッテマースガ、アイシテマストカイウ
      コトバ、キコエテキマセンデシタヨォ。
      エ?チャントシャベレ?ホットケ
恒平好子:そんな言葉は使わなくても、心を伝えることはできるの。
      きゅいいんきゅいいん
壁野アナ:衆人環視の中で、二人だけで通じちゃってるんですかぁぁっ?!
      きゅいいんきゅいいん
恒平好子:ああ・・・超絶技巧をいとも軽やかに・・・
      ☆・・・きらきらきら・・・☆
壁野アナ:☆・・・きらきらきら・・・☆
      はっ!!
      でも・・・これって、もしかして女性の方にもすごい知識がないと・・・だめ?
恒平好子:だめ。
壁野アナ:・・・・・私、この時代に生まれなくてよかったと思います。
      こうして実況できるだけで、幸せですから。
恒平好子:わたしわこうしてしげひらさんおみることができただけで
      もうおもいのこすことわありません
      ☆・・・きらきらきら・・・☆・・・ きらきらきら・・・☆・・・きらきらきら・・・☆
壁野アナ:解説者が蕩けたため、現場からの中継を終わります。
      え?私の女子アナ生命も終わり?
      そんなぁ・・・





重衡殿被囚

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蛇 足

長々とお付き合い、ありがとうございました。
どの掛け合い漫才(汗)が、「被囚」のどのエピソードに対応しているか、
ご一読の通りですが、分かりづらい部分がありましたら、ごめんなさい。

「被囚」を書く時に思ったのが、重衡と銀というキャラクターを
自分なりに捉え直し、統合したイメージを作りたいということでした。

銀のルートは知盛の死の先でしか成立しない、という切なさ。
また、取り戻した記憶に関しては、南都焼き討ちに焦点が絞られていますが、
平家一門としての思いは、銀の中ではどのようなものだったのか、
本編では描かれていないだけに、とても妄想をかき立てられます(笑)。

いずれまた、妄想が熟成しましたら、この辺りのことは書いてみたいと思っています。
ある意味、この駄文はそのための助走かもしれません。
もし、こちらを先に読まれた方がいらっしゃいましたら、
ぜひ「重衡殿被囚」の方もお目通し下さいませ。

2007年3月14日筆