― 2012年 新年企画 ―

神子への贈りものがテーマです。
同じ四神同士の会話で、ほとんどセリフのみですので、
シチュエーション、背景などは、ご想像のままに。




1: 玄 武

「永泉、私たちは神子に新年の賀を伝えるために来た。
なのに、なぜ笛を手にしている」
「え…あの…神子が、私の笛を聴きたいとおっしゃっていたので、
よい機会と思い、新年にふさわしい曲を吹いて差し上げようと」

「神子が望んだのか」
「はい…神子は楽がお好きだと…。
あ、でも…私の拙い笛では
かえって神子のお耳汚しになってしまうかもしれません…」

「神子の願いを叶えるのだ。
なのになぜ要らぬ心配をする。
永泉の笛には、水気の力が宿っている。
神子に贈るにふさわしい」
「あ、ありがとうございます、泰明殿。
では参りましょう」

「いや、先に行け、永泉」
「え…あの…私がご一緒すると何か障りが」
「土克水。
神子に与えられるべき水気の力が
私の土気で弱められるからだ」

「ああ……泰明殿は
何事も本当に深くお考えになるのですね」
「…神子を待たせるな、永泉」
「はい。では、お先に失礼いたします」


………神子は楽が好き…なのか……。

永泉の笛の音が聞こえてきた。

新玉の年に神子に贈るもの……
その意味をより深く考えていたのは、
私ではなく永泉だ。

私は、祓えの儀式を執り行おうと考えてここに来た。
だが、よい贈りものとは、
神子が望んでいること、好んでいるものに
思いを致してこそではないのか。

静かに流れる笛の音に、
小鳥たちも木の枝に止まり、じっと耳を傾けている。

………神子が好むのならば、
私にも、一つだけ…贈ることのできる楽がある。
一つだけの……歌が。

だが……歌うべきだろうか。

永泉があかねの部屋から出てきた。
「お待たせいたしました。
神子がどうぞ…とおっしゃっています、泰明殿」

笑顔で泰明に会釈して、永泉は行ってしまった。

迷っている時間はもうない。
そうだ、神子の部屋に着くまでに決めるのだ。

泰明は一歩踏み出す。 ――歌う
もう一歩 ――歌わない
次 ――歌う
歌わない
歌う
歌わない
歌う!

「あけましておめでとうございます、泰明さん」

「神子、耳を貸せ」
「え?」
神子のために…
神子だけのために、私は歌おう。
神子の耳元で……心をこめて。









新年の目標: 封印を破り隊




2012年お正月企画

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2012.01.01 筆 02.22 [小説]に移動