クリスマスSSS・泰明

現代ED後、クリスマスのデートという設定です。
あかねとの会話ですが、八葉のみが話します。



めりいくりすますだ、神子。

今宵の挨拶の言葉はこれでよいか。

そうか、適切な挨拶ならば問題ない。

この後、ぷれぜんとという物を神子に贈りたい。
だが神子は何が欲しいのか、私には分からない。

欲する物があるなら言ってほしいと何度も伝えたが、
なぜまだ返事をしない。
ぷれぜんとの刻限は迫っている。
早く答えてくれなければ、神子に何も贈れないまま
くりすますとやらが終わってしまう。

………何もない?
私と一緒ならば……神子も問題ない……というのか。

神子、急に頬が赤くなった。
寒いか。

……私の頬も赤い?
確かに熱を感じる。
だが私は寒くない。

なぜ首を傾げているのだ、神子。
疑問があるなら何でも問え。

私がぷれぜんとというものにこだわる理由?
この世界の住人の神子が、これを分からぬという理由が分からぬ。

くりすますは大切な者に贈り物をする慣わしと聞いている。
恋人同士ならばくりすますは特に大切な日だ。
だから神子には特別な品を贈りたいのだ。

神子? どうして固まっている……?
もしかして、私達は恋人同士ではないのか?

声をもう少し小さく?
周りに聞こえている?
私は偽りを言っていない。なぜ声を潜める必要がある。
だが、神子が望むならそうしよう。
神子も恋人同士であると思っているなら問題ない。

……?
神子からも私に何か贈りたい?
私は今日、神子からの贈り物をもらっているが……。

まずは神子を待つ時間だ。
神子を想いながら佇んでいると、
美しいお前の姿、お前の愛らしい声、お前のあたたかな笑顔が私の心を満たす。

そしてにこにこと笑いながら神子が来る。
眼の前のお前は、私の心にいたお前よりもさらに美しく愛らしい。
胸の鼓動が激しく乱れるが、それもまた心地よい。
お前の浄らかな気が私を満たし、
お前のやさしい声が私の…………

声をさらに小さく?
周りに聞こえている?
もう一度言うが、私は偽りを言っていない。
なぜ声を潜める必要がある。
だが、神子が望むならそうしよう。

………これではどうだ?
私の声が聞こえるならば問題ないが、
大切なことを言う。
耳を貸せ。

神子、私達には形あるぷれぜんとは不要なのかもしれぬ。
互いの愛こそがこの世で最も大切な贈り物だ。

神子、愛している――。






[頼久]  [天真]  [イノリ]  [詩紋]  [鷹通]  [友雅]  [永泉]
[小説トップへ]





16.12.25 筆  19.8.11[小説]に収録