クリスマスSSS・頼久

現代ED後、クリスマスのデートという設定です。
あかねとの会話ですが、八葉のみが話します。



神子殿、め……めりいくすり…すま…す。

…っ!! 申し訳ありません。言い直します。

神子殿、めりい…くりすます。
これで、よろしいでしょうか。

……うれしい、と、仰るのですか。
そのようなまぶしい笑顔で……。
しかし、私は神子殿に笑顔を向けられる資格はありません。

はい、仰る通り、言い慣れぬ言葉ゆえ、繰り返し練習いたしました。
しかし、神子殿を前に言い間違えるなど、
このような失態は許されることでは…。

み、神子殿……?
私の唇に…神子殿の指が……。
沈黙せよ…と?
畏まり…ま………

…………………………
…………………………!

み…神子殿……今度は、お顔が近い…です。

私が固まっていたから?
私を案じて下さったのですか。

申し訳ありません。
神子殿の美しい指が触れた時、一瞬、意識が途切れてしまいました。
武士としてあるまじきことです。

神子…殿?
そのように激しく頭を振られては、お身体に障ります。

私が何かおかしなことを申したからでしょうか。
だとしたなら、申し訳………

謝るな……と?
肝心な時に言い間違えたことも、神子殿の笑顔に安らぐことも、
神子殿に触れられただけで心を乱すことも、
全て過ちではない……と?

ありがとうございます、神子殿。
あなたの言葉はいつも優しく、
私の戸惑う心を包み込んでくれます。

分かってはいるのです。
神子殿と私は、もはや主従ではないのだと。

けれど、こうして神子殿の世界に迎え入れて頂いた今でも、
とても不思議な心地がします。

少しずつ、慣れていってもよいでしょうか。
日夜心を強く保ち、惜しまず努力することを誓いますので。

この世界で、主従としてではなく、
あなたを愛する一人の男として生きていく。
罪深い私にこのような幸福が訪れるとは、想像すらできないこと……
いいえ、想像などしてはいけないことでした。

違う…のですか、神子殿。
幸福は訪れるものではなく、自らの手で作るものだと。
今の私が幸福であるなら、それは私自身が勝ち得たものなのだと…?

神子殿……。
たとえ主従でなくても、私はあなたを敬わずにはいられません。
私はいつまでも、あなたをお守りいたします。

どうか……共に、幸福になりましょう。






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16.12.25 筆  19.8.11[小説]に収録