聖夜

〜弁慶×望美〜
(「十六夜」エンド後)




たとえ傷が癒えても

覚えています

あの痛み
忘れることはない

僕は、忘れては…ならないんです



最初の矢は、この胸に……

身体を抉る痛みに呻く間もなく
腕に、肩に、足に、腹に、顔に、
無数の矢が雨のように降り注ぎ

僕はもう、なす術もなく、ただ立ちつくして


僕が葬り去った数限りない人達の痛みを
今、僕が受けているのだと

修羅の道の終わりには、このような死が待っているのだと

いつか訪れるこの時を
僕は受け入れなければなりませんでした


法師の僕だけど、最期に経を唱える資格はない…

なぜならそれは、救いを求めること……だから

僕は、救いを求めてはならないのだから



僕は、ただ君のことだけを思っていました

遠い時空の彼方に還らせた、
君のことを……

去りゆく君の涙に、
僕は、自分自身の手で
この世で一番大切な人の心を引き裂いたことを知りました

だからなのか

君の笑顔が……
思い出せなくて

最期なのに……

消えゆく意識の中で

それだけが心残りで





ああ……

君と共に狭間を越え
時空を渡り

傷が消えても
僕はまだ夢とうつつの間を彷徨って

ふと気がつくと
隣にはいつも…望美さん…君がいました

君のぬくもりを抱きしめて
君のあたたかさに包まれて


君は繰り返し、ささやいてくれましたね

愛していると

この…僕を……
罪と血にまみれ
自ら修羅を求め続けた、この僕を……






そして君に導かれ出た宵…

きらめく光に満ちて
笑いさざめく人々が行き交い
誰もが皆、笑顔で
あたたかな祝福と祈りが響く街


望美さん……

この街には、天上の星が降りてきたのですか


君の優しい声が教えてくれる

聖夜……
今宵は聖なる神の降誕の日…と


君の柔らかな手が、僕の手を包み込む

一緒にこの日を祝おう…と


そして君という存在が、僕に伝える

生きてよいのだと
僕は…君と共に在ってよいのだと



愛する人と手を取り合い歩くこの時…

幸福は…
こんなにもささやかで
尊い


なぜ…なんでしょう

きらめく光が……こんなに滲んでいるのは…






☆・・・クリスマス集・・・☆

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弁慶さんは、笑いで流せないと、
管理人の習性として、どうしても痛い方向へ走ってしまいます。

弁慶さんが抱えていたもの、
正直、それがまだ管理人の中では未消化です。
消化不良が正しいかもしれません(汗)。

でも、逃げてばかりもいられません。
ということで、↑のようなものを書いてしまいました。
神の降誕を祝う夜というより、
まるで「贖罪」の夜……ですね(滝汗)。


2008.2.17 拍手より移動