時空(とき)のさすらい人


狭間を往く者


音もなく
光もなく
熱もない
時空(とき)の狭間を飛ぶ

ただ一人


時の彼方…
灼け付く痛みに泣き叫びながら
落ちていった…
私の遠い記憶

今またこの狭間を往く

心の痛みが
嗚咽となり
虚空にこだまする


腕に残るのは
愛しい人の感触

冷たくなっていく肌
青ざめていく顔

私を見上げた瞳から光が失せ
残酷な終焉を告げる影が
つややかな頬に落ちた


長き歳月を経てもなお
私はお前を守りきれなかった

どこで間違えたのか

なぜ、私ではなく、
お前が逝かねばならないのか

一途に私を追ったばかりに……


お前の真っ直ぐな眼差しに
お前のひたむきな剣に
表れた想い

それに心揺らいだ私は
この上もなく…愚かだ


お前は光の中を歩む者
生命の輝くままに生きていく者

私は影
光に背を向け、影を追ってはならない


過去へ…
お前の生きている時空へ戻り
今度こそ、お前を救おう

龍神に選ばれし神子の八葉として
剣の師として
何も語らず
何も求めず
ただお前だけを守る


重ねてきた全ての時空と
全ての想いを
心の闇に深く沈めて……




刹那の幻の如く
黄金のきらめきを残し、
狭間を飛ぶ影は消えた


行き場を無くした
透明な雫だけが
虚空に漂う










 

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[12.皐月の里]  [13.腕輪]  [14.剣が繋ぐ光]  [15.交錯]
[16.若き師と幼き弟子]  [17.交錯・2]  [18.鞍馬の鬼・前編]  [19.鞍馬の鬼・後編]
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あとがき


リズヴァーン連作SSシリーズ 「時空(とき)のさすらい人」 の第1話です。
話の時代背景は、ゲーム本編の4〜5年前から、
エンディングまでの期間になる予定。

時系列順に進む話ではないので、話の舞台があちこち飛ぶことになりますが、
「遙か3」好きな神子様には、問題ない(笑)です。
毎回、独立したSSとしてお楽しみ頂ければと思っています。

時折、拙作「果て遠き道」をベースにした箇所が出てくるかもしれません。
けれど、未読だと完全に意味不明になってしまうような出し方は致しませんので、
あれ?と思った方は、申し訳ありませんが笑って読み流して下さい。



2007.8.4 筆