時空(とき)のさすらい人


交錯・3 〜水車〜




眩しい太陽が朝霧を払って高く上り、
木々の青葉が陽光に照り映えている。
熊野の夏はもう間近だ。
今日も中辺路は本宮に詣でる人々が絶え間なく行き交っている。

が、そこから少し離れた細い山道は、
奥山のようにしんと静まりかえり、荘厳な山の気が支配していた。
滅多に人の通わぬその道を、登り行く者達がいる。

一人は急峻な崖道や草深い獣道、時には高い梢の上を素早く移動していた。
その動きはあまりに速いので、誰かが彼を見たとしても、
空の雲が地上に落とした影か、はたまた黒い鳥か獣と思うだろう。

もう一人は日に焼けた巨漢で、
急な斜面でも巨躯に似合わぬ軽やかな足運びだ。
どうやら誰かを探しているらしく、
時折立ち止まっては周囲を見回したり、耳を澄ませたりしている。


さらに、剣を背に負い足音を忍ばせた男が三人。
巨漢よりもかなり先行している。
山道に慣れた足取りで、息を潜めたままぐんぐんと坂を上がっていく。

その時、山の上から笛の音が聞こえてきた。
澄んだ音色が、涼やかな風のように吹き渡っていく。

三人組の男は鋭い眼差しをかわすと、さらに足を速めた。

一方、巨漢は小さく唸って耳をそばだてた。

――あの笛の音は………うむぅ、間違いない。
ということは、あそこに若もいるはずだ。
………まったく、若ときたら……。

額に滲んだ汗を拭い、こちらも急ぎ足になる。

木々の生い茂るつづら折りの山道では、互いの姿は見えない。
梢のざわめきと揺れる木漏れ日に紛れ、黒い影が通り過ぎたことに、
彼らは誰一人として気づかなかった。



笛の音の主は、まだ十になるかならないかの子供だった。
大きな木の根方に腰掛け、一心に笛を奏でている。

山間にぽっかりと開けた草の原。
中央を流れの速い小川が横切っている。
背後に聳える巨岩の内懐から湧き出た伏流水が源のようだ。

その原にはもう一人、同じ年頃の子供がいて、
小川をぴょんぴょんと幾度も飛び越えたり、
身の丈よりも長い棒を流れに入れたり、水底をのぞき込んだりと、
軽やかに飛び回っている。

やがて笛の音が止んだ。
子供は笛を下ろし、大空を見上げた。

「初めて聞く調べだったね。敦盛が作ったのかい?」
小川での遊びを終えた身軽な子供が、竿を放り出して駆けてきた。
敦盛と呼ばれた子供は、心底驚いたようだ。
「私がこれまで奏でた調べを全部覚えているのか、ヒノエ?」

「一度聴けば覚えるからね」
ヒノエは屈託無く笑った。
「ねえ、もしかして、京のことを思い出して吹いていた?」
敦盛はこくんと頷く。
「笛の音は……正直だな。
楽の音は心を映すと…経正兄上がおっしゃっていたとおりだ」
「敦盛は本当に平家のみんなが好きなんだな」

「あ…あたりまえだ。
それで……ヒノエの用事は終わったのか?」
「川幅も深さもいい感じだよ。
水車はここに作る。
敦盛もちょっと小川を見てみない?」

近くに寄ってみると、小川は意外に深かった。
そして……
「ヒノエ……これは……」
「水の中の石組みが見えた?
まちがいなく、人が作ったものだ」
「こんな何もない場所になぜだろう」
「今は何もないけど、昔は人が住んでいたんじゃない?
誰にも知られずにね」

「そうかも……しれない。
だが、どのような人が暮らしていたのだろうか」
「さあね。都を逃れた貴人か、戦に敗れた落人か、朝廷に刃向かった鬼か。
でも、考えてもしかたないよ。
今ここには、水車を作るのにちょうどいい場所がある。
それでいいんじゃない」

「本当に水車を作るのか、ヒノエ」
「もちろん、作るよ」
「おおごとになる」
「おおごとだからやるんだよ。
水車作りの差配くらいできないとね」
「………本気なのか」
「敦盛も手伝ってくれるよな」
「わ……私も……?」
「乗りかかった舟ってやつさ」



三人組は草叢に身を潜めていた。
皆、布を巻いて顔を隠している。

「笛の音が止んだ。間もなくこの道を下りてくるはずだ。
そこの曲がり角に隠れ、ぎりぎりまで姿を見せるな」
「私は上の岩に伏せて待つ。背後を取れば逃げられぬ」
「道を逸れて逃げようとすれば崖下まで真っ逆さまか。
しかし子供相手に大の男が三人がかりとは」
「湛快の子は頭が回る上にすばしこいと聞く。油断するな」
「平家の子はどうする」
「一緒に生け捕る。
だが、どちらも手こずるようなら……よいな、情けは無用だ」
「承知。隠り国の熊野には人ならぬものが棲むという。
湛快の子は鬼に攫われ、死人の国に誘われるのだ。哀れなものよ」

その時、ざわ……と梢が鳴った。
次の瞬間、背後に凄まじい殺気を感じる。

慌てて振り返ると、そこには丈高い黒装束の男がいた。

「ひ……」
掠れた悲鳴が三人の喉から漏れる。

男の髪に一筋の木漏れ日が射し、眩い黄金に輝いているのだ。
その双眸は、熊野の海のように深い青。

「お、鬼……」
「まさか……」
男の殺気に気圧され、三人は剣に手をかけることもできない。

「鬼を騙る者共よ……」
鬼は腰に帯びた長刀に手をかけた。

「この剣の錆となるがいい!」

抜刀の瞬間、我に返った三人は逃げ出した。
怖ろしさに胆が冷えるとは、まさにこのこと。
三人がかりでも到底勝ち目がないことは、剣を交えずとも分かる。

それでもしたたかな男達だ。
三人それぞれに、違う方へと走り出している。

しかし、鬼は一瞬で男達の前に回り込んだ。
山道を駆け上がろうとした男も、
急斜面を滑り降りようとした男も、
行く手に剣を構えた鬼を目にして、慌てて引き返す。

鬼に追われて、三人はほうほうの体で山道を駆け下っていった。

その先で―――



三人組と巨漢が鉢合わせした。

「うぬぅ、怪しいやつらめ!!
まとめて引っ捕らえてくれる!!」
巨漢は手近な枝をばきりと折り、櫓のように構えて仁王立ちになった。

顔を隠し、出で立ちも身のこなしからも、
武芸の心得があることが明らかな三人の男。
それがヒノエと敦盛がいる方向から駆け下りてきたとあっては、
このまま通すわけにはいかない。

一方三人組にとって、これは思いがけない幸運だった。
巨漢の正体は知っている。
顔を覆ったまま遭遇したのは僥倖という他はない。
子供を人質に取ることはできなかったが、
ここでこの男を葬っておけば、湛快の力を削ぐことができる。

三つの剣が、同時に引き抜かれ、巨漢に襲いかかった。

「ヒノエ様ぁ〜〜!!! 敦盛様ぁ〜〜!!!
ご無事ですかぁぁ〜〜〜!!!!」
獣のように咆哮しながら、巨漢は太く長い枝をぶんぶんと振り回す。
大ざっぱな防御のようでいて、三人の動きはしっかり捉えている。

だが、一人ではどうしても死角ができる。
三人は共に戦うことに慣れているとみえ、
素早く散開して巨漢の左右と真後ろに回り込んだ。

「返事はご無用ぉぉ〜〜〜!!!
お逃げ下さいぃ〜〜〜〜!!!」
咆えると同時に巨漢は脇の下から背後に枝を突き出し、
斬りかかってきた男を弾き飛ばす。
したたかに胸を打たれた男は、ぐぅ…と奇妙な音を出して悶絶した。

しかし、打たれた仲間を案ずることなく、
残り二人が同時に斬りかかる。
一人の斬撃は枝で受けるが、もう一人の剣が巨漢の腕に届いた。

「何のこれしき! かすり傷よ!」
巨漢はにやりと笑うと、二人を睨め回す。
荒事では弱さを見せた方が負けだ。
だが、三対一が不利なことは事実。
悶絶した男が意識を取り戻すまでに、
何とかこの二人を仕留めなければならない。

何より大切なのはヒノエと敦盛の命だ。
もしも二人がまだ無事であるなら、
こやつらを足止めしている間に、何としても逃げおおせてもらわねば。

しかし巨漢の願いを嘲笑うかのように、
背後の男がうっそりと立ち上がった。
男がおもむろに剣を構えると、キン…と鍔が鳴る。

不敵な笑みを崩さぬ巨漢の背に、冷たい汗が流れた。



ヒノエと敦盛は、異変に気づいていた。

「ヒノエ、人の声が…したようだ」
「聞き覚えのある声だったね」

二人が息を潜め、耳を澄ませると、
山道の下の方からまた声が聞こえた。

「へん……よぉぉぉ にげ……ださ……ぃぃ」

――声の主が湛快の副官であること、
何者かと戦っていること、
そして二人を守ろうとしていること。

途切れ途切れに届いた声から、
二人は知るべき事を過たずに把握した。

ヒノエは、田辺の荘を治め水軍を率いる藤原湛快の子。
敦盛は平家という武門の生まれだ。
十に満たない年であっても、「もしも」の時の覚悟は常にある。

「ヒノエ、助けに行かねば」
「いいのか、敦盛。
こいつは熊野の厄介事かもしれないんだぜ」
「乗りかかった舟だ」

ヒノエは小川のほとりに引き返し、棒を手にして駆け戻った。
「行くぜ、敦盛」
「急ごう、ヒノエ」



巨漢を助けようと原から駆け下りていく子供達を、
リズヴァーンは気配を消して見守っている。
人の世とは可能な限り関わらないよう己を戒めていても、
子供が害されるのを捨て置くことはできないのだ。

いざとなれば、後を追ってきた怖ろしい鬼として、
三人組の前に再び姿を見せねばならない。
だが、あの二人の子供ならば、
邪な者達に負けることはないだろう、とも思っている。

巨漢が名を叫んだ時に、
リズヴァーンは既に彼らを知っていることに気づいたのだ。

逆鱗の力が見せた来るべき運命の中に、
彼らは……いる。



海の上なら、こんなやつらなど一ひねりにしてくれるものを…!

巨漢は歯噛みする思いだ。
何しろ生業は海賊。
山道での戦いは勝手が違う。
敵の攻撃は何とか防いでいるが、
じわじわと足場の悪い方へ追い詰められていく。

その時――

「三対一って、卑怯じゃない?」

木の上からヒノエの声が降ってきた。

男達は動きを止め、巨漢を牽制しながら樹上を見る。
抑え切れぬ含み笑いが、彼らの喉を震わせた。

勢い込んだ子供が自ら窮地に飛び込んできた――。
傍目にはそうとしか見えない。

だが、そのヒノエが反撃の機会を作ったことに、
彼らはまだ気づいていない。

「若! お逃げ下さい!!」
太陽を背にしたヒノエの黒い影に向かって、
巨漢は焦りをにじませた声で叫んだ。
その間に太い指を素早く腰帯の隙間に滑らせ、
隠し持った愛用の武器を掴む。

「今、そっちに行くよ」
ヒノエは今にも飛び降りんばかりだ。

「わわっ! 危ない! お止め下さい!!」
「こんな高さ、平気だって」

三人組はヒノエから目をそらさず、素早く木を取り囲んだ。

その時、ヒノエの姿がふい…と消えた。
遮られていた眩しい太陽が、男達の目を射る。
敵が目を眩ませた一瞬の隙――。

巨漢の手から錘を付けた縄が飛び、
一番近くにいた男の身体に巻き付いた。
そのまま縄を振り回すと、男の身体が大きく吹っ飛ぶ。

予期せぬ反撃に振り返った男の一人が、
藪から突き出された棒に脇腹を突かれて倒れ込む。

皆の注意がヒノエに集中している間に、
敦盛が小柄な身体を生かして近くまで忍び来ていたのだ。

「敦盛様、お見事!」
すかさず巨漢が飛びつき、倒れた男を背後から押さえつける。

「ぅぬぅっ!!」
残る一人が、剣を振りかざして敦盛に向かう。
が、木の陰に潜んでいたヒノエに足払いをかけられ、
均衡を崩した胸元に、敦盛の棒が突き出された。

敦盛は幼い頃から槍の修練を積んでいる。
身体が覚えた流れるような動きだ。

「痛かった? ウバメガシの木は固いんだよ」
胸を押さえたまま動けない男に、
ヒノエと敦盛が二人がかりで馬乗りになる。
形勢逆転だ。

「さて、どんな面か見てやるわ!」
巨漢は大きく息を吐くと、
男の頭に巻かれた布に手をかけた。

しかし、
「伏せろ!!」
ブンッという風を切る音と、
ヒノエが叫ぶのが同時だった。

がばっと伏せた巨漢の背中を掠めて、何本もの鉄針が飛び、
次には先端に錘の付いた縄が、太い腕に絡みついた。

最初に飛ばされた男が、縄を解いて反撃に出たのだ。
鉄針はヒノエと敦盛にも向かい、
二人は咄嗟に男から飛び退く。

「若!!!」
動揺した巨漢の僅かな力の緩みを逃さず、
下から男がするりと抜け出た。
ヒノエ達に押さえられていた男も素早く立ち上がる。

またもや振り出しか、と思われたが、
戦いは始まりと同様、唐突に終わった。

三人組はそのまま散り散りに走り去ったのだ。



男の一人が取り落とした剣がその場に一本、残っている。
これといった特徴もなく、もちろん銘もなく、
持ち主を知る手がかりはない。

「ううう…ううう……」
巨漢は口惜しさに唸っている。
ヒノエと敦盛の無事が第一。
だが、曲者を取り逃がしてはならなかったのだ。

「あやつらは一体……まさか、むむぅ……しかし……」
湛快と対立する勢力を片端から思い出しては、
どれも怪しいとまたまた唸る。

対立勢力の中には湛快と同じ藤原の一族もいるが、
これまで大きな諍いは起きていない。
だが、熊野三山の別当職を巡り、
きな臭い噂が流れていることも事実だ。

「そんなに悔しがらなくてもいいんじゃない。
やつらが逃げてくれてよかったよ。
さすがにちょっと危なかったしね」

「うむむ、まあその通りですが……。
きゃつの頭巾をむしり取ってやれなかったのが
悔しくてたまりやせん」

「やつらの正体は、きっとオレ達が会ったことのある人間だよ」
「若、それはどういうことですかい!?」

「あいつらが一言もしゃべらなかったからさ。
剣を振る気合いの声を抑えていたし、
笑い声も喉の奥に呑み込んでいた。
それくらい声を聞かれたくなかったんだよ。
顔を隠した上に声まで隠すって、ずいぶん念入りじゃない」

「うううううぅぅむ……」
巨漢は腕組みして考え込む。

敦盛が木に刺さった鉄針を抜いて手に取った。
「ヒノエ、これは初めて見るものだ。
手がかりにはならないだろうか」

「こういう武器は知ってる?」
「すみません、若。あっし…じゃなくて私も初めて見ます。
表立って作られるシロモノじゃないことだけは確かですが……
あっ!!!」

そこで巨漢は最も大切なことを言っていないのに気づいた。

「若、敦盛様、助太刀感謝しやす!!
けど、ああいう時は、あっし…じゃなくて私にかまわず
逃げていただかないと」

ここで巨漢は思案を巡らせた。
ヒノエには少し説教しておいた方がいいかもしれない。
まずは、屋敷を抜け出すのはたいがいにしてもらいたい、と言おう。

しかし、ごほんと咳払いをしたところで、ヒノエが先に口を開いた。

「でもさ、オレ達を探しに来てくれたんだろ?
そのせいで親父が腹心を失うなんて、
あっちゃいけないことだよ」

「わ……若……そこまであっし…じゃなくて私を……」
巨漢の目が、感激でうるうると潤む。

「というわけで、この上の原に水車を作ることにしたんだ。
協力頼むよ」
「は……? 水車? 何のことでしょう。
あっし……じゃねえ、私が協力……ですか?」

「乗りかかった舟だよ。
じゃあ、これからよろしく」




山は再び静けさを取り戻した。

草の原に流れる小川のほとりで、
リズヴァーンは一人、空を見上げていた。

この原に至る道端の大岩に、壊れた鬼の結界があった。
それは力を失い、リズヴァーンの腕輪をかすかに震わせるのみ。
子供達がやすやすと通り抜けたのも道理だ。

川の中の石組みは、倶利伽羅の里のものと同じ組み方だが、
あまり崩れていないところをみると、
この里が滅んでから、長い歳月は経っていないのかもしれない。

滅んだのか、あるいは人々がこの里を捨てたのか――。

理由を求めても、答えは見つからない。
ここに鬼の里の痕跡がある。
それだけだ。

同胞(はらから)の姿を求め、 風の噂を頼りに各地を巡ったが、
淡い期待は、いつもあえなく潰えた。

さやさやと風が渡り、遠くの花の香を運んでくる。
森の奥に鳥の声がこだまし、大空を悠々と鷹が舞う。
高く上った陽を受けて、水面がきらきらと輝く。
柔らかな緑に包まれた山間の原は、明るい静けさに満ちている。

かつてここに……同胞がいたのだ。

ふいにこみ上げた望郷の思いが胸をかきむしり、
いたたまれぬ喪失の痛みに、息が詰まった。

二十年という歳月を経た今でも、
里が滅んだあの夜の記憶は消え去りはしない。

静かな秋の夜に、突如湧き出た怨霊の群れ。
リズヴァーンの眼の前で、
炎に包まれ、怨霊に斬り伏せられ、瘴気に巻かれて
大切な家族、大切な里の人々が死んでいった。

リズヴァーンは、胸に下げた逆鱗を握りしめる。
幼い頃から、幾度こうして痛みを堪え忍んできたことだろう。

…………あと、十年。

記憶の彼方にあり、この先の「時」にまみえる遠い幻を想う。
白い光に包まれた、強く美しいひとの幻……。
あのやさしい笑顔を……。



滅んだ里に祈りを捧げ、リズヴァーンは静かに山を下りた。

熊野にくすぶる物騒な火種が、
遠からず争乱の炎となるのは避けられないだろう。
栄華の道を登りつめようとしている平家も、
いつまでも権勢を振るうことはできない。

間もなく九郎が弁慶と共に平泉に下る。
やがて奥州で力をつけ、戻って来たならば……。

その時、杣人が山道をやって来た。

道の先に何かの影を見たような気がして
男は目をこらしたが、辺りには獣も鳥もいない。

杣人はぶるっと身震いすると、急ぎ足になった。
森の魔に魅入られぬよう、口の中でまじないを繰り返しながら……。







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 [4.富士川 東岸]  [5.富士川 西岸・前編]  [6.富士川 西岸・後編]
[7.霧の邂逅]  [8.兆し]  [9.天地咆哮]  [10.三草山]  [11.三条殿炎上]
[12.皐月の里]  [13.腕輪]  [14.剣が繋ぐ光]  [15.交錯]
[16.若き師と幼き弟子]  [17.交錯・2]  [18.鞍馬の鬼・前編]  [19.鞍馬の鬼・後編]
[21.交錯・4 〜ある日安倍家で@3〜]



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あとがき(すみません、長いです)


メモリアルブックによると、
敦盛が熊野で生活していたのは満7歳〜9歳の頃、
神子と会う10年前です。

その頃のヒノエとあっつんって、
いったいどんな口調で話していたんでしょう。
ゲームと全く同じではさすがにおかしいし、
かといってあまりに子供っぽくしてしまうと、
それもまた違和感バリバリです。

でもヒノエは元々IQが高そうだし、
敦盛も武士の家できちんと学んできているはずなので、
二人ともわりと大人びた話し方をするのではないかしら…。

なんてことをぐるぐる考えて何度も書き直した結果、
ゲームと近いこのような感じになりました。

ゲーム内と全く同じでいいとか、
年齢に沿った話し方であるべきだとか、
感じ方は様々あると思いますが、
どうか「全然違う感」がありませんように、と祈るばかりです。


それはさておき――
将臣+銀髪兄弟編の「交錯1、2」に続き、
同じタイトルで話を書いたのは、
神子と再会するまでの時間の中で、
後に深い縁を結ぶことになる人達の人生と先生の人生とが
交錯する瞬間があったのではないかしら……
という思いからです。
(連作を書く時の妄想稼働力にもなってます(笑))

ヒノエが水車を作ったという話は、
「運命の迷宮」の中で敦盛が語っていましたね。

詳しくは描かれていないゆえに、
このエピソードはとても気になるし、気に入ってもいて、
ヒノエ×望美のオフ本でも書いたり、
さらに続きも……と画策したりしているくらいです(笑)。

さて、この話の後、敦盛は熊野詣でに来た清盛と共に帰京し、
熊野には争乱が起きます。
そしてヒノエも敦盛もそれぞれに辛い体験や重い決断を経た後に
八葉として神子と出会うことになるのですよね。

「遙か3」が私を惹きつけて止まないのは、
このように八葉一人一人の背景に、
それまで必死に生きてきた時間が垣間見えることです。
二次ダマシイが燃え上がります。


……っと!
5年ぶりの更新に、少し熱くなって語ってしまいました。
もう1作、続けて「交錯」をテーマに書きたい話があります。
そちらは、重めの話の多いこの連作の中で、
ちょっと毛色の変わったものになるかもしれませんが、
引き続き、がんばります!!




2015.10.15 筆